「興梠が物足りなかった」 三都主が見た五輪コロンビア戦

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コロンビア戦を見た三都主は、興梠に対して「シュートまでもっと貪欲にいってほしい」とコメント 【写真:ロイター/アフロ】

 サッカー日本代表は日本時間8日、ブラジル・マナウスのアレナ アマゾニアでリオデジャネイロ五輪グループリーグ第2戦のコロンビア戦に臨み、2−2で引き分けた。

 日本は後半14分にコロンビアのテオフィロ・グティエレスにゴールを許すと、20分にはオウンゴールで0−2と2点のビハインド。しかし、22分に浅野拓磨、29分に中島翔哉がゴールを決めて2−2の引き分けに持ち込んだ。

 前半の決定機を決め切れず、後半に2点を追う厳しい展開となった日本のグループリーグ2戦目を、識者はどのように見ていたのか――。元日本代表で現在ブラジルにいる三都主アレサンドロ選手に、コロンビア戦の感想と中2日で迎える11日のスウェーデン戦に向けての展望を聞いた。

コロンビアのリズムにさせなかった

――まずはコロンビア戦を見ての印象は?

 この間のナイジェリア戦(4−5)に比べると、今日の方が立ち上がりから日本がボールを保持できていたし、チャンスを作っていました。前半から点を取れそうなチャンスが何回かあったと思います。コンパクトに戦っていたし、前へのプレッシャーもかけることができていて、あまりコロンビアのリズムにさせていませんでした。

 守備はコンパクトに行い、あまりスペースを与えず、コロンビアが好きな3人でのパス回しだったり、独特なリズムからのパス交換などをやらせなかった。それがとても良かったと思います。

――ナイジェリア戦に比べて守備が良かった印象ということですか?

 守備が良かったというより、チームが一体になって戦っていたと思います。メンバーも多少変わっていますし。ただ、日本はリズムは良かったんですけれど、中盤があまり起点にならなかった。どちらかと言うと藤春(廣輝)のサイドの方が今日も起点になっていましたね。

 全体的に見ると、サイド攻撃だったり、1人、2人目の選手のコンビネーションが良かった。前線の浅野も裏への飛び出しを結構していたし、自分のスピードを生かしたプレーができていたと思います。

 ただ、そこに絡んでこない興梠(慎三)がちょっと物足りなかった。分厚い攻撃にならないのは、そういった部分かなと思います。浅野がディフェンスラインの背後でボールを受けたり、裏への飛び出しだったり、両サイドに開いてボールを受けたり、ドリブルで勝負をしたり、シュートで終わったりとすごくいいプレーをしていただけに、そこに興梠が絡んできたら、もっとチャンスが作れていたのではないでしょうか。

――興梠選手には、具体的にどういったプレーを期待していましたか?

 もっと前線でボールキープをして、シュートまで貪欲にいってほしかった。エースとしての仕事が興梠に求められていることだと思うので。チームプレーはできているんだけれど、個人で勝負するプレーが足りないと感じました。前半はいい場面もあっただけに、後半もそれができたら勝てたと思います。

 チームとしても、もっと日本らしい攻撃ができたはずです。中盤でポジションを固定しない戦い方が必要でしたが、前半は矢島(慎也)が右、中島(翔哉)が左にずっと張っていて、どちらかというと相手が読める攻撃になってしまっていた。後半は南野(拓実)が中盤に入ってきたり、大島(僚太)が入って短いパスを回したりと、いろいろな選手が前線に飛び出していた。1点目がそうだったのですが、ボールを回して、穴を探して、パスコースを作っていた。日本はそういう攻撃で崩していくべきだと思います。

 中盤の選手が固定したポジションでプレーしていると、相手がパワープレーに回ったり、守備が簡単になってすぐ潰されてしまうんですよね。後半の日本の方が、何をしてくるのか分からない怖さがありました。短いパスも回せるし、後ろへのスルーパスも出せる。浅野のスピードも生かせるし、ロングシュートも打てるし、ドリブルもできるし、サイドのオーバーラップもあるなど相手が読みづらい攻撃になる。そういうプレーが、日本人の一番得意とするダイナミックなサッカーにつながるのだと思います。現に後半の2得点は、ダイナミックなパス回しからゴールが生まれました。

――後半17分に井手口陽介に代わって大島が、矢島に代わって南野が入った。その交代が効いたということですか?

 そうですね。大島が入るとボールの落ち着きが違うし、大島がボールを回すことでリズムが生まれていました。南野は外にポジションを取るんだけれど、それだけじゃなく、中に入って他の選手とのコンビネーションも生み出していた。サイドバックから見ると、ちょうどボランチとディフェンスラインの間のポジションになるので、南野が中に入れば一緒に付いていけない。相手からすればすごくマークがしづらいので、かなり有効だったと思います。その2人が起点も作っていましたし。

 最後の交代は、室屋(成)が左サイドに行って亀川(諒史)が右サイドに入ってきたのですが、イマイチ何が狙いだったのか分かりませんでした。室屋を左に行かせた理由は何だったのかと。守備なのか、そこで守備をうまく固定して、(右サイドの)亀川を前にどんどん上がってほしかったのか。日本の2失点目は藤春の判断ミスだったと思いますが、それまで藤春は結構、攻撃の起点になっていました。室屋を代えて亀川にしても良かったのではと思います。

良い試合の終わり方だったので自信を持ってほしい

――次のスウェーデン戦に向けては?

 今日負けなかったのはすごく大きいと思います。もちろん勝つことがベストでしたが、0−2から追いついたのはすごく大きいです。2点差になってからは少し焦りが出たと思いますが、2人(大島と南野)が入って流れが変わりました。

 3試合目は勝たなければいけない状態の中で、90分を通して集中し、とにかく勝つという気持ちを持って戦うことが大切です。集中を切らさない試合をしてほしいと思います。今日の後半はすごく良い試合ができたと思うし、すごく良い終わり方でした。その終わり方に自信を持って戦えば、3試合目は勝てると思う。必ず勝って、次のステップに進んでほしいです。

――1戦目のときはまだまだと言っていたが、ブラジル国内での五輪熱は盛り上がってきましたか?

 開会式が始まってからブラジル人の目の色が変わりましたね。すごく盛り上がってきていると思います。ブラジル人選手のメダルへの期待もあるし、スポーツが好きなブラジル(国民)は、良い五輪になってほしいと思っているので。

――中でもやはりサッカーが一番の盛り上がりを見せているのですか?

 かなり期待されていますが、結果があまり出ていないですからね。先ほどイラクと0−0で終わりましたので、3試合目に大きなプレッシャーがかかっていると思います(編注:ブラジルは2試合連続の引き分けでグループ2位)。結構危ないなという雰囲気になってきていますね。その分、女子の調子が良いので、女子に期待が集まっていますね。

三都主アレサンドロ

元日本代表で現在ブラジルにいる三都主アレサンドロ選手に、五輪代表の戦いぶりを聞いた。写真は2004年当時のもの 【宇都宮徹壱】

サッカー留学生として明徳義塾高校に入学すると、1997年に清水エスパルスへ加入。99年には当時史上最年少の22歳でJリーグ年間最優秀選手賞を受賞した。2004年に浦和レッズへ移籍し、07年にはオーストリアのレッドブル・ザルツブルクでもプレー。08年に浦和へ復帰を果たすと、09年8月に名古屋グランパスへと移籍。01年に日本へ帰化すると、日本代表としても活躍し、通算キャップ数は82を数える。13年からはJ2の栃木SC、FC岐阜と渡り歩き、15年にブラジルへ帰国。マリンガFCとグレミオ・マリンガでプレーしたのち、現在はブラジル4部リーグのパラナ・サッカー・テクニカル・センターに所属している。
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