思い通りの展開に持ち込めず後手に 大山加奈が語るバレー日韓戦の敗因

田中夕子

得点以上に脅威だった相手

エースのキム・ヨンギョンと同時にヤン・ヒョジン(14番)を止められなかったのが痛かった 【写真:ロイター/アフロ】

 打ち切れなかったというとセッターばかりに責任が向けられるようですが、今日はレセプションも厳しく、セッターが動いて取りに行かなければならないボールばかりでした。

 韓国には五輪最終予選で「サーブで崩された」というイメージも強く、余計な力が入ってしまったのかもしれませんが、金軟景(キム・ヨンギョン)選手も第1セットはジャンプせず、ロングフローターサーブを打っていましたし、金姫真(キム・ヒジン)選手のサーブも五輪最終予選の試合と比べれば、決して脅威ではありませんでした。サーブ対策は特に念入りに行ってきたはずなのに、そして韓国のサーブが五輪最終予選と比べればそれほど良かったわけではないことを考えると、この試合でのレセプションは非常に厳しい。もったいない試合でした。

 数字だけを見るとキム・ヨンギョン選手に決められた(30点)と感じた人もいるかもしれませんが、むしろ敗因はミドルブロッカーの梁孝真(ヤン・ヒョジン)選手をまったく止められなかったことです。

 AクイックやBクイックなどの速いトスだけでなく、ふわりと上げたセンターやライトからの攻撃を決められ過ぎました。第1セットの序盤からヤン・ヒョジン選手にトスが上がる機会は多かったのですが、キム・ヨンギョン選手や、キム・ヒジン選手への警戒が強かったため、ヤン・ヒョジン選手へのブロックは1枚。抜けたコースをレシーブで拾う作戦を取っていましたが、ほとんど上がらず、勢いづいたヤン・ヒョジン選手にはスパイクだけでなく、サーブ、ブロックでもかなりの得点(21点)を取られています。

 そしてもう一つ。第1セットは日本のサーブが走ったことで、キム・ヨンギョン選手の対角に入る朴正我(パク・ジョンア)選手を崩す、狙い通りの展開に持ち込みながら、代わって入った李在英(イ・ジェヨン)選手にはサーブを返され、攻撃面でもブロックが機能しませんでした。

 韓国はキム・ヨンギョン選手という大エースがいますが、キム・ヨンギョン選手頼りになってしまえば対策を立てやすいチームでもあります。キム・ヨンギョン選手だけに絞らせる展開に持ち込めず、常に迷いが生じて、結果的に後手後手になってしまったこと。それが今日の試合で一番の敗因ではないでしょうか。

カメルーン戦でもう一度自信を持ってほしい

 この試合に懸けていた強さは、両チームの選手の姿からとてもよく伝わってきました。

 キム・ヨンギョン選手の気迫もすごかったですが、木村沙織選手も負けていません。体重が乗ったいいスパイクを打ち、後衛の際もフェイントボールをカバーするなどよく脚も動いていました。ただ、第1セットの序盤からかなりの汗をかいていて、顔が真っ赤だったので、試合の後半は大丈夫だろうか、という不安を持っていたのですが、残念ながらその不安が的中する展開になってしまいました。

 木村選手だけでなく、日本チーム全員がこの試合に懸けていただけに、今日の敗戦はとても悔しく、ダメージも大きいはずです。

 それでも試合はまだ始まったばかり。中1日で、また次の試合を戦わなければならず、今後はブラジル(11日)、ロシア(13日)といった強敵との対戦が控えています。
 切り替えようと言ってもなかなか切り替えるのは難しい状況ではありますが、まずは次のカメルーン戦、そして今後の試合に向けて、いいイメージをまた作らなければなりません。

 会場にも慣れず、独特の空気が漂い、あれだけの緊張感がある中、第1セットは前後や人と人の間を狙うなど、素晴らしいサーブが打てていました。入り方が難しい最初の試合のスタートで、あれだけのサーブが打てたことには自信を持って、カメルーン戦は、もう一度自信を取り戻すきっかけをつかんでほしいですね。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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