鍵は韓国戦、日本はサーブで攻めろ! 大山加奈が語る女子バレーの見どころ

田中夕子

日本時間6日に開幕するバレーボール。見どころや、ポイントを大山加奈さんに語ってもらった 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 日本時間6日に開幕するリオデジャネイロ五輪のバレーボール。女子日本代表は、前回のロンドン五輪では28年ぶりとなる銅メダルを獲得し、リオでは金メダル獲得を目指す。今大会の見どころや、上位進出のポイントは何か。自身もかつて全日本で活躍し、2004年のアテネ五輪に出場した大山加奈さんに語ってもらった。

韓国戦が重要な理由

OQTでは韓国のサーブに手を焼いた。サーブで攻められる前に、日本がサーブで攻めることが重要となる 【坂本清】

 ポイントは初戦の韓国戦。もうここしかない、というぐらいの大一番です。

 五輪の開幕戦であり、しかも開始は現地時間の朝9時半。国際試合でこの時間はなかなか経験がありません。コンディショニングも含め、韓国戦をどう戦うかというのが日本にとって最重要。まさにカギとなる一戦です。

 韓国戦がそれほど重要になる理由はなぜか。5月の五輪最終予選(OQT)で負けていることもありますが、予選ラウンドの結果次第で準々決勝の対戦相手が決まるため、ブラジル、ロシアといった強豪国との対戦が後に控える日本が万が一韓国に負けてしまうと、予選グループリーグを4位通過の可能性もあります。準々決勝で対戦するB組は、おそらく中国、米国といったワールドカップ(W杯)や世界選手権を制した強豪国が1、2位で通過をしてくるはずです。準々決勝で勝利し、準決勝、決勝へと勝ち上がる可能性を広げるためには、何としても韓国に勝ち、ブラジルまたはロシアにも勝利してグループ2位以内で準々決勝へ進出することが理想です。

 2012年のロンドン五輪3位決定戦でも戦い勝利したように、日本は対韓国戦の相性はそれほど悪くありません。それなのに、OQTではなぜ敗れたのか。一番の差はサーブでした。

 キム・ヨンギョン選手とキム・ヒジン選手のサーブで得点を取った韓国に対し、日本は「ここへ打たなければならない」と狙いすぎるあまりサーブで勢いに乗ることができませんでした。ヨンギョンやヒジンのサーブは、ジャンプサーブともフローターとも区分できないサーブで独特の変化が生じるうえ、日本であのようなサーブを打つ選手はいません。ジャンプサーブのように、ただ当てるだけではなく、コントロールしないと弾かれてしまうので、レセプション(サーブレシーブ)をする選手は非常に難しいと思いますが、OQTの結果も受け、十分な対策はなされているはずです。

 サーブで攻められる前に、日本がサーブで攻める。これは韓国戦に限らず、すべての試合に共通する大きなポイントと言えるでしょう。

最大の武器はディグ

日本最大の武器はディグ。粘り強い守備で、攻撃につなげる 【坂本清】

 OQTは日本にとって本当に苦しい戦いを強いられましたが、その厳しい状況を勝ち抜いたということに加え、成果や得られた好材料もいくつもありました。

 まず日本にとって最大の武器となったのが、ディグ(スパイクレシーブ)力です。キャプテンの木村沙織選手や、同じウイングスパイカーの石井優希選手、セッターの宮下遥選手、リベロの佐藤あり紗選手を中心に、決められてもおかしくない相手の強打を何本も拾っていました。

 加えて、攻撃陣も木村選手と石井選手の両サイド、セッター対角、オポジットの長岡望悠選手が大会を通して高い攻撃力を発揮しました。前衛に限らず、バックアタックも含めた長岡選手の攻撃は非常に効果的で、昨年のW杯よりもたくましさが目立ちました。負けたら終わりという苦しい状況を経験し、その中で自分が決めてチームを勝利に導くという強い意志が見えましたし、OQTを戦い抜いたことは長岡選手にとっても大きな自信になったはずです。

 石井選手もOQTの当初はスタメンではありませんでしたが、非常に調子が良く、安定したプレーで中盤からはレギュラーに定着しました。大逆転勝利を収めたタイ戦も、宮下選手のサービスエースで流れを引き寄せた後、石井選手があの何とも言えない、独特の緊張感や空気が漂う中、冷静に連続してポイントを決めたことも大きな勝因でした。初めての五輪で力を発揮するのは簡単なことではありませんが、OQTを通して得た自信を武器にして戦ってほしいですね。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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