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市船優勝も好チームがそろった総体
高校サッカー界の有望株たち

波乱を巻き起こした昌平にはタレントが存在

高校総体で3年ぶり9度目の優勝を果たした市立船橋
高校総体で3年ぶり9度目の優勝を果たした市立船橋【写真は共同】

 7月27日から8月2日にかけて広島県を舞台に高等学校総合体育大会(通称インターハイ)の男子サッカー競技が開催された。千葉県勢対決となった決勝は、市立船橋が流通経済大柏を1−0で下し3年ぶり9度目の優勝で幕を閉じた。


 初戦(2回戦)で2連覇中の東福岡(福岡)が敗れるという波乱の幕開けとなったが、結果的にはベスト4の顔ぶれを見ると、青森山田(青森)、市立船橋、流通経済大柏のユース年代最高峰の高円宮杯プレミアリーグに所属する3チームと、東福岡を3−2で破った昌平(埼玉)という、実力のあるチームがそろった形となった。


 初出場ながら東福岡、静岡学園(静岡)などを下しベスト4まで駆け上がった昌平は、タレントが多くそろった好チームだった。もともと「史上最強チーム」と前評判も高く、番狂わせを起こす可能性を秘めていた。初戦で相対した東福岡からすると、「かなりの難敵」だった。波乱と書いたが、「大波乱」と書かなかったのはそのためだ。


 特に、今大会の昌平は注目すべき3選手全員が躍動を見せた。弾丸ドリブラーのFW本間椋と、決定力とボールコントロールに長けたMF松本泰志、そして全国トップレベルの技術とパスセンスを持ったMF針谷岳晃だ。東福岡戦の3ゴールをこの3人がたたき出すなど、5試合を通じて3人でチームの全10ゴールをマーク(本間4、松本3、針谷3)。


 中でも本間と針谷は大きなインパクトを与えた。本間はボールを持ったら迷わず縦に仕掛ける強気な姿勢と、抜群のアジリティーとクイックネスで、DFラインを混乱に陥れた。3回戦の前橋商業(群馬)戦では、最大の山場だった東福岡戦の後という難しい試合だったが、0−1でリードを許した後半アディショナルタイム2分に、中央をこじ開け、同点ゴールをたたき込んだ。針谷はその高いサッカーセンスで冷静にゲームをコントロールし、関係者の高評価を得た。一言で言って「うまい」。DFに囲まれても、テクニック満載のドリブルですり抜け、相手の逆を取る動きとパスで、相手DF陣を翻弄(ほんろう)し続けた。これからの成長がさらに楽しみな存在となった。

1年生FWを発掘した市船

 優勝した市立船橋は、DF杉岡大暉、原輝綺、MF高宇洋というプロ注目の選手が安定感抜群のプレーを見せた中で、1人の「ラッキーボーイ」が現れたことも、結果が出た一因となった。1回戦の秋田商業(秋田)戦で、「彼のシュートセンスを買った」と、朝岡隆蔵監督は1年生FW郡司篤也をスタメンに大抜てき。するといきなりハットトリックを達成し、チームを一気に勢いづけた。2回戦の関東第一(東京)戦でも1−0の決勝弾を挙げると、準々決勝の瀬戸内(広島)戦でも1ゴール。決勝は「戦術的な理由」でベンチスタートだったが、「郡司が出て来たこと。これは非常に大きな財産だと思う」と朝岡監督も目を細めた。


 郡司の特徴はシュートの多彩さ。もともとはミドルシュートを得意としていたが、今大会のゴールはペナルティーエリアでスペースに飛び込んだり、少ないタッチでゴールを決めることが多く、「彼の得点力に期待して起用したが、その通り発揮してくれた」(朝岡監督)と、ゴール前での勝負強さがチームにとって大きな武器となった。

ほろ苦さを味わった流経柏

決勝戦を戦った市立船橋(青)と流経柏(赤)は、共に1年生プレーヤーが大きな経験を積んだ
決勝戦を戦った市立船橋(青)と流経柏(赤)は、共に1年生プレーヤーが大きな経験を積んだ【写真は共同】

 準優勝の流経柏はDF関川郁万、佐藤輝、MF熊澤和希の3人の1年生が注目だった。関川はセンターバック(CB)として3年生CB松浦駿平とともに守備を統率。勝ち気な性格と対人能力の高さで、強豪の最終ラインを支えた。だが、3回戦の日本航空(山梨)戦で腰を負傷し、準々決勝の履正社(大阪)戦は大事を取って出場しなかった。「3年生を中心に本当にまとまっている。自分も自覚を持ってプレーしたい」と語り、準決勝の青森山田戦、決勝戦には出場をしたが、プレーはキレを欠いた。決勝後、関川は大粒の涙を流した。敵将の朝岡監督が「彼のコンディションは万全ではなかった。ウチとしてもそこを狙った」と語ったように、市立船橋の容赦ない攻撃の前に、強さは見せたが、決勝弾となったシーンは関川が奪ったボールを奪い返されたことから生まれた。幾重にも重なった悔しい経験。彼にとってはほろ苦い初めてのインターハイであった。


 熊澤にとっても関川とは違った意味で、ほろ苦い大会となった。180センチのサイズを誇るボランチは、守備力とビルドアップのうまさが特徴だが、3回戦でスタメン出場を果たした以外は、決勝まで出番が訪れなかった。2人の1年生が試合に出続ける中、彼は悔しい思いをした。決勝では67分に投入され、足下の技術と対人の強さは見せたが、主軸2人を出場停止で欠き、ベンチにはフィールドプレーヤーが3人しかいなかった中での、3番目の交代カードだった。その事実は彼にとっても多くのことを考えさせられるものであった。


 だが、1年生がここまでの経験を積めることは、とてつもなく大きなアドバンテージとなる。うまくいった経験よりもうまくいかなかった経験は人を大きくさせる。彼らにとってはかけがえのない経験になったはずだ。

安藤隆人

大学卒業後、5年半勤めた銀行を退職して単身上京し、フリーサッカージャーナリストに転身した異色の経歴を持つ。ユース年代に情熱を注ぎ、日本全国、世界各国を旅し、ユース年代の発展に注力する。2012年1月にこれまでのサッカージャーナリスト人生の一つの集大成と言える、『走り続ける才能たち 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)を出版。筆者自身のサッカー人生からスタートし、銀行員時代に夢と現実のはざまに苦しみながらも、そこで出会った高校1年生の本田圭佑、岡崎慎司、香川真司ら才能たちの取材、会話を通じて夢を現実に変えていく過程を書き上げた。13年12月には実話を集めた『高校サッカー 心揺さぶる11の物語』(カンゼン)を発刊。ほかにも『高校サッカー聖地物語 僕らが熱くなれる場所』(講談社)、があり、雑誌では『Number』、サッカー専門誌などに寄稿。2013年5月〜14年5月、週刊少年ジャンプで『蹴ジャン!SHOOT JUMP!』を連載した。

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