7人制ラグビーは「時間をつくれ!」 元日本代表・斉藤祐也の五輪展望
女子代表もスペースのあるところでプレーを
女子日本代表のエース・山口真理恵 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
こちらも五輪予選を見ると15人制に近いラグビーをしています。山口(真理恵)選手のようにスピードのある選手もいるので、五輪本番ではスペースのあるところでプレーすることにチャレンジしてほしいです。
――女子日本代表はタグラグビー出身組と他競技からの転向組が切磋琢磨しています。五輪競技にになったことで男子もその流れが進むでしょうか?
あり得ると思います。実際に米国は陸上競技から選手を引っ張ってきて、成功していますから(米国代表カーリン・アイルズは元陸上選手で100メートル10秒24)。
日本はセブンズの強化がまだ十分に進んでおらず、五輪が終わってからどうするかが大事になります。15人制と同じ感覚で見るのではなく、セブンズ独自の強化が必要になってくるでしょう。
複数のスポーツを経験することがプラスに
ハンマー投げから転向し、15人制日本代表となった知念雄 【写真:アフロスポーツ】
フィジカルはもちろん、スキルと視野が広がると思います。今、子どもたちにいろいろなスポーツを教えているんですが、さまざまな競技の特性を身につけると幅が広がっています。
ラグビーもいろいろな競技経験者が入ってきていますが、サッカー出身の選手はキックがうまかったり、スペースを見つける能力がありますし、バスケットボール出身の選手はパススキルがあり、心肺能力が高いです。
エディージャパンも大きいボールを使ったり、小さいボールを使ったり、レスリングを取り入れていました。能力の高い選手はすぐにできますが、一般的な選手にとっては小さいころからそうしたことを取り入れた方が身につくと考えています。
あとは自分で選択できることが大事です。強制的に練習させられて日本代表になる選手もいますが、自分でいろいろなものの中から好きなものを見つけた子どもは本当に一生懸命やりますし、伸びるのがすごく早いですね。
日本代表は相手を惑わせて勝利を
セブンズ日本代表は一体となってメダル獲得を狙う 【写真:ロイター/アフロ】
僕は五輪に出るためにセブンズをやっていました。(1997年の)明治大学2年生から代表に呼ばれたんですが、シドニー五輪(2000年)で正式種目に入るという噂があったんです。そこで15人制のワールドカップに出る前に五輪に出たいと思っていました。結果的に五輪競技になるのは遅くなりましたけど、正式種目になったと聞いて「復帰しようかな……」と一瞬、思いましたね(笑)
だから今回、五輪に出られる選手がうらやましいです。セブンズは15人制とは違う特性を持った選手が活躍できるので、そうした選手にとっては励みになると思います。
――最後に、あらためて日本代表に期待することを。
ディフェンスでは倒せなくても、相手をつかんでボールにアタックすることが大事だと思っています。倒すことだけが正解ではなくて、ボールをつながれないように。僕の考え方としては小さな選手でもボールを狙って、つながせないようにすることがセブンズのディフェンスだと思います。
ラインで前に出て相手にプレッシャーをかけた状態での低いタックルは有効ですが、後追いだったり、流れながらの低いタックルだとつながれてしまうので、いろいろなタックルを使い分けて、常に判断することが必要です。
攻撃ではオーソドックスに戦うのではなく、ボールを動かしてスイッチやキックパスも使って、相手を惑わせることを期待します。セブンズは人数が少ないので、オーバーラップ(相手の人数を上回る)することが重要になります。「時間をつくる」選手がいると、相手ディフェンスを乱して、オーバーラップのチャンスが増えるので、日本代表も相手を惑わせて、勝利を目指してほしいと思います。
(取材・文:安実剛士/スポーツナビ)
斉藤祐也/YuyaSaito
東京高2年時に高校日本代表に選出。明治大では1年からレギュラーとして大学日本一に貢献し、4年時には主将を務める。サントリーではウェールズ代表を破るなどレギュラーとして活躍する。2002年にフランスのコロミエに移籍。その後は神戸製鋼、豊田自動織機でプレーし、11年に引退。
現在は「コーディネーション・アカデミー」で、子どもたちにさまざまなスポーツ競技を指導する教室を開催。スポーツを通して、体を動かす楽しさを伝えている。