7人制ラグビーは「時間をつくれ!」 元日本代表・斉藤祐也の五輪展望

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 昨年のワールドカップに続いて、五輪でもラグビー日本代表が世界を驚かせることができるのか? 7人制(セブンズ)で行われるリオ五輪ラグビーに、男女の日本代表が出場する。15人制、セブンズの日本代表として活躍した斉藤祐也氏に話を聞いた。

「時間をつくる」ためには特別な能力が必要

斉藤祐也氏は、レメキ(中央)が「時間をつくる」ことができると評価する 【写真:伊藤真吾/アフロスポーツ】

――リオ五輪に出場する男子日本代表で期待している選手は?

 これまでもセブンズで大活躍しているレメキ(ロマノ)選手。若くて成長著しい合谷(和弘)選手。あとスピードのある福岡(堅樹)選手ですね。

 レメキ選手はトライを奪う決定力があるのが魅力のひとつ。そして今の日本代表で「時間をつくる」ことができるのがレメキ選手とトゥキリ(ロテ)選手だと思います。ディフェンダーを巻き込める選手なので、対戦相手にとっては脅威でしょう。

――「時間をつくる」とは、どういうことでしょうか?

「時間を止める」というか、間合いを外して相手ディフェンスの動きを止めることです。アタックとディフェンスが近づいて、本来なら相手にタックルされるタイミングで、走るコースを変えたり、後ろに下がったり、パスダミーをしたりして、タックルの間合いから外れます。

 セブンズはボールを持った時にこうして時間をつくれるとリズムが変わりますし、「何かしてくるな」と相手に警戒心を与えられます。そこでディフェンスにギャップが生まれれば、チャンスが広がります。

 僕がプレーしていたころからセブンズは「時間をつくる」ことが一番大事だと考えていました。日本人でそれができる選手はあまりいませんでしたが、当時できたのは岩渕(健輔/日本代表GM)さんですね。彼はゲームメイクもできましたし、時間もかけられて、天才的なところがあったので僕も多くのことを学びました。

 走っていて、ただ止まるだけでは相手にタックルされてしまいますから、「時間をつくる」ためには特別な能力が必要です。岩渕さんは体も大きくないし、足も速いわけではありませんでしたが、テクニックで時間をつくれる選手でした。

合谷の鋭いステップに期待

合谷は鋭いステップと激しいタックルで日本代表を引っ張る 【写真:Haruhiko Otsuka/アフロ】

――合谷選手と福岡選手についてはいかがでしょうか?

 合谷選手は日本人離れしたトリッキーな動きができて、鋭いステップワークもあります。体は小さい(170センチ、77キロ)ですけど、外国人選手にとってはディフェンスしづらいはずです。今の15人制ラグビーは接点に近いところでプレーするのが主流ですが、セブンズではスペースがあるので、ワイルドにやってほしいと思います。「時間をつくる」という部分でも彼のステップには期待しています。

 福岡選手の魅力はやはりトライを取れるスピードがあることですね。バックアップメンバーになった松井(千士)選手も出番があるかどうかわかりませんが、期待しています。セブンズはスペースがあるので、フィニッシュできる選手にはどんどんトライを取ってもらいたいです。

――今回のリオ五輪で日本はニュージーランド(NZ)、英国、ケニアと対戦します。いずれも強豪国ですが、勝つために必要なことは?

 英国はオーソドックスなチームなので、日本代表はディフェンスでひたむきにプレッシャーをかけて、ダブルタックル、アンブレラ(外側の選手が飛び出してパスコースを限定させること)も使って、相手にミスが出るのを待ちたいです。ディフェンスでプレッシャーをかけ続けることが勝利の最低条件になると思います。

 NZとケニアについては時間を相手に与えたくないですね。少しでも余裕を持たせるとトリッキーなプレーが出てきて、オフロード(タックルされながらのパス)でつながれてしまいます。ケニアのコリンズ・インジェラのように大きくて速い選手が多いので、彼らを走らせないことが重要です。

「空間認識能力」が重要になるセブンズ

現役時代には7人制、15人制の日本代表として活躍した斉藤祐也氏 【写真:赤坂直人/スポーツナビ】

――結団式の後もメンバーが入れ代わり、さらにケガ人がいるという情報もありますが大丈夫でしょうか?

 チームをつくるなかで、交代選手をうまく使えていれば問題ないと思います。ただ、日本代表では五輪予選はあまりメンバーを交代せずにコアメンバーが出続けていたので少し心配ですね。

 セブンズは15人制以上に空間認識能力が重要になります。スペースが平面だけではなくて、立体的にも広くあるので、途中から入ってくるメンバーも共通してスペースを認識しないといけません。見てからパスするのではなく、ノールックでも「ここに味方がいてスペースがある」と感じてパスができるぐらいの信頼性が必要になります。

――普段のセブンズの大会では試合の間隔が2時間ほどあるようですが、今回は4時間ほど空く予定です。選手村に戻れず、ロッカールーム使用も制限されると言われています。調整の難しさは?

 時間がある方が日本代表にとっては良いと思います。ポジティブに捉えてほしいですね。
 いろいろな国際大会に出るとトラブルはありますから、セブンズのツアーに出ている選手は大丈夫だと思います。「シャワーが出ない」とか「眠るスペースがない」とかはよくあるので、苦にならないはずです。僕は適応に時間がかかるタイプでしたが(笑)

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