独走の広島、2位に8差も不安は? よみがえる悪夢も広島OBは太鼓判

ベースボール・タイムズ

2位に8ゲーム差をつける緒方カープ。果たしてこのまま25年ぶりのVへ逃げきれるか 【写真は共同】

 25年ぶりのリーグ制覇に向け、首位を快走する広島。7月終了時点で、2位の巨人に8ゲーム差と、頂点へ最も近い存在であることは間違いない。それでもカープファンは、まだ一抹の不安を抱えている。1996年の「メークドラマ」、一時は11.5ゲーム差をつけた巨人に、逆転優勝を許した歴史があるからだ。
 
 今年の広島は大丈夫なのか。当時、新人王を獲得した翌年のプロ2年目で、主力投手として活躍した、現野球評論家の山内泰幸氏の証言をもとに、悪夢の再現はあるのか、検証してみたい。

メークドラマのきっかけは札幌

 96年の“敗因”について、山内氏が最初に挙げたのが、「札幌・円山球場で巨人に浴びた9連打」だった。

 7月9日、9連勝中で貯金21の広島は、この時点で借金1の巨人と対戦した。当時、巨人が恒例にしていた「北海道シリーズ」の一戦で、この試合の2回に、広島先発の紀藤真琴が2死走者なしから、7番の後藤孝志に二塁打を打たれたのを皮切りに、投手の斎藤雅樹を含め、6番の清水隆行まで、9者連続でヒットを浴び、計7点のビッグイニングを許したのだ。

「あの試合から、それまで何をやってもうまくいっていたチームが崩れ始めた。何とも言えない、どんよりと暗い雰囲気に包まれていった、という記録があります」と山内氏は振り返る。この試合をきっかけに、巨人は7、8月で32勝12敗と大躍進し、逆に広島は連敗を繰り返して失速し、およそ1カ月半後の8月20日には順位が逆転。「死んでいたチームを勢いづけるきっかけは作らない」という教訓だ。

 今季で言えば、7月29日、11ゲーム差の3位・横浜DeNAとの試合で、筒香嘉智の2本塁打を含む5被弾、24安打を浴び、計19失点という大敗を喫した。今のDeNAに、96年の巨人並みの戦力がある訳ではないが、若いチームを勢いに乗らせてしまうと、脅威であることに間違いない。

コンディション不良も重なった96年

 山内氏は続ける。

「さらにあの年は、オールスター戦に出場した主力選手が、集団で風邪を引いてしまう、ということがありました。選手のコンディションという意味で、後半戦の失速に影響があったと思います」

 選手の言わば、コンディションの悪化は、大差をつけたゆえの油断によるものだったのかもしれない。今季で言えば、チームが独走状態に入りつつあった球宴明けに先発、リリーフで活躍していたサウスポーの戸田隆矢が、左手関節靭帯部分損傷で離脱した。その原因が寮での転倒ということで、ことの真偽は定かではないが、防げるケガだったと言わざるを得ない。

 さらに、7月の最終週には、同じく先発ローテの一員である岡田明丈が、発熱で登板日を変更する事態も起こった。当初の登板予定日の試合が雨天中止となったため、その時点では事なきを得たが、優勝争いの佳境で同じような事が起これば、致命傷になりかねない。

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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