日本で開花したレメキ、五輪に挑む 7人制ラグビーでも「世界を驚かせる」

斉藤健仁

14年に帰化「日本が世界で一番好きな国」

長い距離を走り切るスピードだけでなく、タックルを受けても倒れない力強さも魅力 【写真:ロイター/アフロ】

 すでに奥さんと結婚、男の子を授かっていたレメキは「日本が世界で一番好きな国です。ずっといたい」と、日本国籍取得を決めて、2014年8月に認められた。「ビッグネームが来日しているから、出番がなくなる」と、ホンダでのプレー時間を増やすことも目的だったと正直に話してくれたが、もちろん、「日本人になって日本代表でプレーするのはやはり気持ちは違う」と五輪出場を視野に入れての選択だった。

 レメキにとって、リオデジャネイロ五輪は、15人制でもプレーしながらも、ほぼセブンズを優先して活動してきた4年間の集大成となる大会である。セブンズでも世界的強豪で優勝候補のNZ、ワールドシリーズで初優勝したケニア、強豪のイギリスと同じプールになった。目標とするメダル獲得のためには、1勝1分以上で、ベスト8に進むことが最低条件となる。

 ただ、レメキは「後から強いチームとやるよりも、先に強いチームと当たった方がいい」と、プールの組み合わせについては歓迎している。もちろん母国であるNZとは「五輪で対戦したかった。勝って、昨年、15人制の日本代表が南アフリカ代表に勝利したように、世界を驚かせたい」。また今年のワールドシリーズではケニアに勝利、イギリスに多くの選手を輩出しているイングランドには引き分けも経験した。

練習試合で初めてオーストラリア代表に勝利

セブンズ日本代表の中心的存在となっているレメキ(左) 【写真:ロイター/アフロ】

 もちろん日本にとって厳しいプールであることには変わらないが、男子ラグビー日本代表は7月上旬にオーストラリアに遠征し、同代表と6試合を戦った。練習試合だが、オーストラリア代表に初めて勝利し、残りの5試合のうち2、3試合は負けたものの接戦で「チームとして自信になりました! ディフェンスで失点を抑えれば世界と戦えます」。

 もともと日本代表のラックを作らずボールを動かし続けるアタックは十分機能していたが、世界の大きくて速い相手に対するディフェンスが課題だった。そのため、フィットネスとフィジカルを鍛えつつ、素早く前に出て、2人で挟む組織ディフェンスの精度を上げるべく取り組み、その効果も少しずつ出てきたと言えよう。

セブンズは五輪が集大成。15人制でも日本代表を目指す

レメキ(左)はリオ五輪の公式ウエア発表会見にも出席 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

「世界を転戦して、友達と会えるから楽しい」とセブンズの魅力を語っていたレメキは、7人制ラグビーでプレーするのは、今大会が最後と決めている。「長い間、セブンズをやってきましたが、ゴールラインは五輪です」。
 かねてから、2015年の15人制日本代表の活躍にも感化されており、「立川(理道)や松島(幸太朗)のプレーはすごかった。だから自分も(15人制の)ワールドカップに出たい」。そして、五輪を一区切りに、15人に専念、来年のサンウルブズでのプレーも視野に入れている。2019年、15人制の日本代表として、しっかりと世界と戦うビジョンを描いている。

 昨年、2人目の男の子も生まれ、二児のパパになったレメキは「五輪は世界のベストなアスリートが集まる大会です。NZ、そして日本の家族にプレーを見せたいし、メダルを取って帰ってきたい。世界一になれたらうれしいですね」と、大きな目を一段と輝かせながら、8月9日にリオデジャネイロで始まる、最後のセブンズと心に決めている五輪に思いを馳せた。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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