清宮幸太郎、ちょっと短かった2年目の夏 8強で敗退に「甲子園は遠くて難しい」

清水岳志

注目されていた早稲田実・清宮。2年目の夏は西東京大会準々決勝で八王子に敗れ、2年連続甲子園はならなかった 【写真は共同】

 昨年と同じように最後は目を赤く腫らした。違うのは甲子園ではなくて、西東京大会準々決勝だったということ。早稲田実・清宮幸太郎の2回目の夏が終わった……。

 神宮球場に詰めかけた観衆は2万3000人。この中に、ここで終戦を迎えると思っていた人がどれだけいるだろうか。対戦した八王子高とは昨年も準々決勝で当たり、11対5で勝利した因縁があった。今夏の結果は4対6。リベンジされたわけだ。

終盤以降重苦しい雰囲気を覆せず

 早稲田実の先発は3年生の吉村優。4回戦・明治高戦、5回戦・国士舘高戦で好投し、今大会ベンチ入りしている6人の投手陣の柱になっていた。4回まで丁寧にコースを付いて打たせて取る。

 早稲田実の5回。2死2塁から清宮が初回同様に敬遠気味に歩かされた。ここで1年生・野村大樹がセンターオーバーの二塁打を放ち、2点を先制した。

「清宮が歩かされるケースも多いだろうけど、その次の野村らみんなでカバーする」と和泉実監督が言っていたように、理想的な形で先取点を取った。

 だが、吉村が4回からボールが荒れていて疲れが出ているように見えた。2死から2人の打者に3ボールまで粘られてもいた。案の定、5回の八王子高の攻撃。8番・細野悠に死球を与え、9番・早乙女大輝の送りバントを拾った捕手・小掛雄太が一塁に悪送球。1番・加藤大翔に四球で無死満塁となった。ここで投手を服部雅生にスイッチ。

 服部は昨夏の甲子園でも140キロを出すなど去年の柱だったが、今年は肩が重く、大会に入ってやっと投げられるようになったばかり。球威がなくボールは上ずる。2番・竹中裕貴に初球を右中間に持っていかれ同点。3番・椎原峻にはレフト前へのクリーンヒットで勝ち越し。4番・保條友義に犠飛、6番・川越龍にも二塁打と一挙に2対5と逆転を許した。

 今年の早稲田実は3年生に公式戦の経験者が少なく、重苦しい雰囲気を覆す迫力不足が否めなかったのも事実。

「自分が3年の夏を終わらせた…」

試合後のインタビューでは「3年生を甲子園に連れて行きたかった」と涙が頬を伝わった 【写真は共同】

 それでも、「清宮、野村が上級生のため、この夏に甲子園に出るんだという気持ちが僕にも伝わってきた。6月の終わりごろから、一体感のあるいいチームになっていた。なんとか花を開かせたかった」という和泉監督の願いが望みをつなぐ。

 1点ずつを加え、6対3で迎えた早稲田実の最終回。主将・金子銀佑のライト前ヒットなどで1死一三塁として、清宮がバッターボックスに入る。初球のインコースをとらえた打球はいい角度でライト後方へ。起死回生同点3ランか。

「えっ、行ったか。いや、ダメか……」

 記者席ではこんな独り言があちこちで漏れた。犠牲フライにはなったが1点を返したのみ。野村はサードゴロでゲームセット。

 清宮は「ちょっとボールの下側をこすってしまった。狙ったボールだったが、とらえ損ねた。結果として打てなかったので悔いが残る」と振り返った。

「3年生は手本で見習わないといけない存在だった。背中で引っ張ってきてくれた。3年生を甲子園に連れて行きたかった。最後、つなげられなくて自分が3年生の夏を終わらせてしまって…。来年? まだそういう気持ちにはなれないです」

 3年生に触れるコメントでは清宮の頬を涙が伝った。

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著者プロフィール

1963年、長野県生まれ。ベースボール・マガジン社を退社後、週刊誌の記者を経てフリーに。「ホームラン」「読む野球」などに寄稿。野球を中心にスポーツの取材に携わる。

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