イチローの偉業、全米各地でも話題に フィラデルフィアでの4連戦初戦は音なし

丹羽政善

フィリーズ戦の初戦、2度目の打席は四球で出塁 【Getty Images】

 フィラデルフィアはアメリカの独立に深い関わりがある土地であり、独立宣言のときに鳴らされたとされる「自由の鐘」はその象徴だ。同じく特徴的な鐘の“ひび”は最初に鳴らしたときに入ったと伝えられるが、フィリーズの本拠地、シチズンズ・パークの右中間にもひび割れた自由の鐘が再現されている。フィリーズの選手が本塁打を打ったときに聞こえる鐘の音は、まさにその鐘の音という設定だが、日本人にとってみれば、そうした歴史よりも、昨季の最終戦でイチローがマウンドに立った場所として記憶に残っているかもしれない。

 あの日は底冷えし、見ながら震えていたことと、シアトルからフィラデルフィアに夜行便で飛んだので、眠気を我慢しながら見ていたのを覚えているが、8回裏にイチローがマウンドに上がると、寒気も眠気も吹き飛んだ。ダルビッシュ有が左打席に立つのとは、わけが違う。

 さて、18日(現地時間)からそのフィラデルフィアでフィリーズvs.マーリンズの4連戦が始まった。

 前日、スタメン出場して3安打したイチローは、9回に代打で登場。すると客席から、セントルイスほどではないにしても、大きな歓声が沸き起こっている。

 否が応でも、イチローがマイルストーンに近づいていることを教えてくれるが、今、そのことを実感するのは、イチローが打席に立ったときだけではない。

地元にとどまらず期待が高まる

 この日の午後のこと。『マイアミ・ヘラルド』紙のコラムニストから電話がかかってきた。

 同紙のマーリンズ番記者クラーク・スペンサーから、「番号を教えてもいいか?」と聞かれていたので、「もちろん」と答えてから5分も経っていなかった。

 話題はもちろん、イチローである。イチローの3000安打である。

「日本では、どのぐらい話題になっているんだ?」と。正直、日本にいないので、どう答えていいか分からなかったが、アメリカ国内では、じわりじわりと期待が高まっている。
 電話がかかってきたのはその一例だが、米メディアが、3000安打までの残り本数を地元メディア以外でも、伝えるようになっている。

 偉業に関連した特集記事も少なくなく、『ニューヨーク・タイムズ』紙、『シアトル・タイムズ』紙という、イチローがかつて在籍した街の地元紙は、イチロー本人のインタビューを元にした記事をすでに掲載した。

『シカゴ・トリビューン』紙も、イチローとルー・ピネラ元マリナーズ監督のエピソードを紹介し、現在マーリンズが訪れているフィラデルフィアでも、『philly.com』というサイトにイチローとマリナーズのコーチだったジョン・マクラーレン(現フィリーズコーチ)との関係がフィーチャーされていた。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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