後半戦へ期待させるオコエ瑠偉の成長 攻守に課題も自ら考え、修正する18歳

中島大輔

鬱憤をためた前半戦ラストゲーム

当初は課題とされていた打撃では成長を見せ、フレッシュオールスターでは3安打猛打賞の活躍を見せた 【写真は共同】

 センター方向に3本のヒットを放つ活躍で優秀選手賞に輝き、何度も屈託のない笑みを浮かべたフレッシュオールスターの前夜、東北楽天のオコエ瑠偉はフラストレーションを溜め込んでいた。7月13日に行われた前半戦最後の埼玉西武戦では「9番・センター」として3試合ぶりに先発出場したが、4打数0安打に終わっている。

 西武プリンスドームのグラウンドレベルから屋外の駐車場に続く階段は、ビル5、6階分はあるだろうか。フレッシュオールスターが開催される倉敷行きの重い荷物を両手いっぱいに持ちながら、オコエが一歩ずつ上がっていく。自分自身に怒りをぶつけるように、高卒1年目の前半戦を振り返り始めた。
 
「失敗だらけでした。結果が出なかったら、何かしら課題があります。そういうことを1軍で学べました」

 高卒では球団初となる開幕1軍に抜てきされ、43試合に出場して打率1割8分3厘。プロの壁にぶち当たり、自分の現在地を思い知らされた。
 
「今は『自分が、自分が』となっちゃっていますね。結果を出せている人が『自分が』となるなら自己チューですけど、僕はそうではありません。最低限打てないと、チームに貢献できませんから」

 まだ“自己チュー”になる段階までも到達していない。それでも「自分が」と考えてしまうのは、未熟さを感じるからだ。

「最低限とは、チームバッティングのことです。ランナー二塁で2ストライクになったら、最低限、逆方向に打つ。まずはそうやって野球を覚えていかないといけない」

 昨夏、高校時代に出場したU−18W杯では記者の前で常に明るく振る舞っていたが、1年経った今、高校ジャパンの頃とは違う一面が見られた。それほど、オコエは自分自身に鬱憤(うっぷん)を積もらせているのかもしれない。

 だが、6月18日の横浜DeNA戦で放ったプロ入り初本塁打、沖縄で行われた同29日のオリックス戦ではライト前ヒットを俊足で二塁打にするなど、高い才能の片りんを見せていることも事実だ。チームの消化した試合の半分以上で出場機会を与えられているのは、それだけ光るものがある証でもある。

池山コーチが感じる歯痒さ

 春季キャンプから半年間指導してきた池山隆寛打撃コーチは、ドラフト1位ルーキーの軌跡をこう振り返る。
 
「18歳のプロ野球選手の成長と考えれば、すごいこと。普通なら2、3年かかるところを、この半年間でやってのけた。ただ、そういう成長ぶりからすると、彼の将来を考えたときに歯痒さがある。こちらの求めていることが高すぎるだけにね」

 普通なら2、3年かかるというのは、たとえば金属バットから木製への適応だ。オコエは昨年のU−18W杯でこの点に課題を見せたものの、プロに入って順応していると池山コーチは見ている。
 
 そうした高い吸収力を誇るからこそ、池山コーチは同時に歯痒さを口にする。

「高校時代、『ボールに当ててゴロでも打てば何とかなる』という考えがあったのか、トップが縮んでしまうところがある。練習で修正しているけど、悪いクセがなかなか抜けない」

 オコエの打撃練習を見ていると、確かにトップをつくった後、腕主導で振りにいく傾向がある。それが池山コーチのいう「トップが縮む」ということだ。こうしたプレーにおける「悪いクセ」は、打撃に限った話ではない。

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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