錦織ら日本勢が語る、リオ出場の動機 ツアー選手が五輪に見出す価値とは?

内田暁

土居「出るからにはメダルがほしい」

日比野(右)、穂積(中央)とともに公開練習に臨んだ土居。初の五輪は単複両方での出場となる 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

「錦織君から、『試合の前になるとすごく緊張するから、気持ちの整理はしておいた方が良いよ』とアドバイスされました」

 14日の五輪出場会見で、大勢の報道陣を目の前に幾分緊張した面持ちで語ったのは、女子ダブルスの穂積絵莉(エモテント)である。「五輪はまず無理だろう」と思っていたところに舞い込んできた、ITF推薦枠獲得の報。今季、ツアー優勝も果たしたダブルスの成長株は、「まだ実感が湧かない」と目を丸くしつつも、「ダブルスでは誰でもチャンスはある」と上位進出に意欲を見せた。

 その穂積とダブルスを組む土居美咲(ミキハウス)は、単複両方での五輪出場。昨年末にツアー優勝しランキングを急上昇させ、自力で手にした夢舞台への切符である。

 先のウィンブルドンでベスト16入りを果たした土居は、ランキングも自己最高の36位に達するなど、今まさに躍進の季節を疾走中。4年前には届かなかった五輪出場も、「タイミング的に良い時期で迎えた」今回のリオでは必然のようにつかみ取った。

「良いパフォーマンスが出せるのではと思う。出るからにはメダルがほしい」

 目標も、「出場」から「メダル」へと、この4年で格上げされた。

リオから何を持ち帰るか

日本女子3選手は、五輪出場を契機にさらなる飛躍を目指す 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 土居に負けず劣らず、五輪出場を渇望してきたのが日比野菜緒(ルルルン)。テレビで見た数々の五輪名場面に心を震わせてきた少女の夢は、昨年のツアー優勝によって、一気に現実味を帯びた。結果的にランキングでの自力出場にはわずかに届かなかったが、春先のケガなども考慮されてのITF推薦枠出場獲得。

「小さい頃からの夢だった五輪に出られて光栄。出るからには一番高いところを目指す」

 険しい表情を見せつつも、同時に「開幕式の入場が楽しみ!」と無垢な期待に顔を輝かせた。

 彼女たち日本女子3選手が五輪初出場を純粋に喜ぶのは、それぞれが異なるキャリアのステージにいながらも、五輪から何かを持ち帰ろうとの意欲を共有するからだ。

「4年に一度という張り詰めた緊張感を感じられると、今後の私の競技生活にも、何か違ったところが出ると思います」と土居は言う。

 エースのこの言葉に代表されるように、三者ともに“世界最大のスポーツの祭典”を経たその先に、何かが変わった自分の姿を映している。

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著者プロフィール

テニス雑誌『スマッシュ』などのメディアに執筆するフリーライター。2006年頃からグランドスラム等の主要大会の取材を始め、08年デルレイビーチ国際選手権での錦織圭ツアー初優勝にも立ち合う。近著に、錦織圭の幼少期からの足跡を綴ったノンフィクション『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)や、アスリートの肉体及び精神の動きを神経科学(脳科学)の知見から解説する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。京都在住。

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