和田毅、前半戦の好投導いた日本流 鷹詞2016〜たかことば〜

田尻耕太郎

リーグトップの9勝でチームの大黒柱

5年ぶりの日本球界復帰となった和田。古巣ソフトバンクで先発ローテを守り、ハーラートップタイとなる9勝の活躍を見せている 【写真は共同】

 前半戦、15試合に先発して9勝。ハーラートップに立ち(ほか4投手とタイ)、開幕から一度も先発ローテを外れることなく投げ続けた。和田毅が3連覇を目指す福岡ソフトバンクの大黒柱となっている。工藤公康監督も「前半戦の投手陣のMVP」と絶賛したほどだ。

 だが、この活躍に特に驚きは感じていない。今年、5年ぶりに古巣に戻ってきた2月の春季キャンプを見て、「変わっていない」ことを確認し、以前と変わらぬピッチングを見せてくれるだろうと予想をしていたからだ。

渡米前と変わらなかった投球フォーム

 アメリカ帰りの選手が苦しむ例はたくさん見てきた。彼らのほとんどは「フォーム」や「体格」が、誰もがすぐに気づくほどに、渡米前に比べて大きく変化していた。和田の持ち味は下半身主導のピッチングだ。打者からボールの出所が見づらいとされる独特なフォームはそのままだった。

 日本のマウンドはアメリカよりも柔らかい。例えば、足場が悪いところでは足元(下半身)を意識して歩くように、ピッチングも柔らかいマウンドほど下半身をうまく使わなければ、いいボールは投げられない。逆にアメリカのスパイクの刃の跡もつかないような硬いマウンドは、強靭すぎるほどの上半身を持つ投手に向いている。

 和田のスタイルは、明らかに日本向きだ。和田自身も帰国当初から「マウンドにはすぐに慣れると思います」と何の不安も感じていない素振りを見せていた。

 また、体つきは以前にホークスに居たころよりも一回り大きくなったが、それでも米国時代よりも2、3キロ絞って臨んだ。以前、ソフトバンクでプレーをしていた11年シーズンの前に「人生で初めてやっと80キロを超えました」と話していたが、渡米後はMAX86キロまで増えたという。

ケガ続きで日本復帰を決断

「日本にいた時は自分の理想とする投球フォームやボールを追求する中で体作りを行ってきました。でも、アメリカは日本よりも日程や移動がとてもハードなので、体を鍛えて大きくしないと、1年間もたないんです」

 だが、アメリカでの和田は故障続きだった。渡米後すぐに左ひじの「トミー・ジョン手術」を受けたのをはじめ、太ももや左肩筋肉の炎症などにも見舞われた。憧れだったメジャーでわずか通算5勝と、道半ばながらも日本復帰を決断した背景には「もしアメリカに残って来年もまたケガをしたら、ホークスに戻る機会はなくなってしまうかもしれないし、野球人生をケガで終わらせたくない」との思いがあった。

完全復活を後押しした走り込み

 これは、以前に聞いた和田の理論である。

「最も大事なのは体幹です。イメージは、頭からお尻に串がズボって刺さっている状態。その中心軸をくるくる回せば、腕も勝手に振れる。デンデン太鼓のように。中心軸が曲がらず、体の芯をキュッと回すんです。ただ、外側、いわゆるアウターの筋肉が強過ぎると、遠心力がかかるぶん体の負担は大きくなります」

 だからこそ、渡米後の和田の姿をテレビで見て嫌な予感を覚えたのだった。これが故障の要因の全てではないにしても、日本復帰にあたり体重を減らして臨んだのは大正解。また、今年のキャンプではよく走っていた。「メジャーのキャンプは実戦形式が多いので、ランニングの時間があまりとれなかった」という。

 和田は若い時から走り込むことで1年間戦う体力をつけ、安定した投球フォームの土台作りもしてきた。日本式の自主トレやキャンプ、そして準備が、和田の完全復活を力強く後押ししたのである。

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著者プロフィール

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

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