混在する“お祭り感”と“真剣勝負” MLB球宴で感じる大きな矛盾

杉浦大介

一発を含む2安打2打点のホズマー(ロイヤルズ)がMVPを獲得 【Getty Images】

“夢の球宴”はあくまで夢の舞台であり、優勝争いに影響を与える場である必要はない――。7月12日(現地時間)にサンディエゴで行われたMLBオールスターを終えて、そんな当たり前のことを改めて感じたのは筆者だけではなかったのではないか。

 オールスター期間中、温暖なカリフォルニアの大地で多くの劇的なシーンが生まれた。11日のホームランダービーでは、怪物ジャンカルロ・スタントン(マーリンズ)が大会記録の合計61発という圧巻のパフォーマンスで優勝。球宴当日の試合前には、地元サンディエゴのヒーローであるトニー・グウィン(故人)、トレバー・ホフマンらの過去の偉業が称えられた。

 試合が始まると、初回に新スーパースター候補のクリス・ブライアント(カブス)が鮮やかな先制弾。2回裏にはにエリック・ホズマー、サルバドール・ペレスというロイヤルズ勢のホームラン攻勢でア・リーグ逆転という楽しみな流れになった。

 結局、試合は4−2でア・リーグが逃げ切り、同点本塁打と追加点のタイムリーを放ったホズマーがMVPを獲得。リリーフ登板したケビン・エレーラも1イニングを完璧に封じるなど、昨季王者ロイヤルズの選手の勝負強さが目立ったゲームだった。

毎年議論になる勝利のメリット

 こうして引き締まった内容になった今年のオールスター。にも関わらず、いやそうであったからこそ、終了後には一つの引っかかりを感じざるを得なかった。このお祭りのゲームに、“勝ったリーグの優勝チームにワールドシリーズのホームフィールド・アドバンテージを与える”という規則はやはり余計にしか思えなかったのである。

「オールスターは楽しむためのもの。ワールドシリーズのホームフィールドが掛かっているという点で、少し意味が変わってしまう。シーズン中に最高勝率を残したチームが常にホームフィールドを手にするべきだよ」

 ナ・リーグ中地区首位のカブスで活躍するブライアントはそう語っていたが、上位につける選手たちにもやはり思うところはあるのだろう。試合終了後には、少なからずのメディアが今年もこの問題に改めて触れていた。

プレーオフ圏外の選手がチャンスに凡打

 5回終了の時点で、ブライアント、ブライス・ハーパー(ナショナルズ)、バスター・ポージー(ジャイアンツ)といったナ・リーグ強豪チームのベストプレーヤーはすでに交代していた。2−4とリードされたナ・リーグが5回裏に2死二、三塁と同点のチャンスをつかむも、ポージーに代わって出場していたウィルソン・ラモス(ナショナルズ)は空振り三振。今季の打撃成績はラモス(打率3割3分、13本塁打)の方が上だが、真剣勝負をうたうなら、それでも大半のファン、関係者は13年MVPのポージー(打率2割9分2厘、11本塁打)が打席に立つ方を望んだはずだ。

 最大の見せ場となった8回表のナ・リーグの攻撃時には、2死満塁のチャンスで、今季新人王候補とはいえ、まだ無名のアレドミス・ディアス(カージナルス)があえなく三振。最終回にはプレーオフ争いとはかけ離れた位置にいるダイヤモンドバックスのポール・ゴールドシュミット、ロッキーズのノーラン・アレナドが凡打を繰り返し、ナ・リーグはこれで球宴4連敗。

 今季はレベル的にはナ・リーグが上という声が多いにも関わらず、この一戦での敗北で、ワールドシリーズを地元で1試合多くプレーする権利を再び失う結果になったのである。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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