「赤い傘」論争で考える応援のあり方 カネシゲタカシの『ぷぷぷぷプロ野球』
【イラスト:カネシゲタカシ】
「ああ、山口百恵ちゃんが出てたドラマの?」と答えた方はある程度年配の方。いま野球界で「赤いシリーズ」といえば広島カープが仕掛ける一連の応援企画のことを指します。
ところがいま、この「赤いシリーズ」が一部ファンの間でちょっとした物議をかもしています。
掟破りの応援企画「赤いシリーズ」
球団公式サイトでは「掟破りな赤いグッズを手に入れて、いつもとは違う観戦をお楽しみにください」と紹介されており、これまでに赤いタオル(対巨人)、赤いドアラ風の耳(対中日)、赤いトラ耳(対阪神)、赤いたてがみ(対埼玉西武)などのグッズが登場しました。
そして6月30日の対東京ヤクルト戦では「赤いミニ傘」を来場者全員にプレゼント。去年の5月以来2度目の登場となった赤い傘は、カープファンによってスタンドを覆い尽くすように掲げられ、曲に合わせて一斉に振られたりと、まるでお祭りのような光景が繰り広げられました。
個人的には「洒落が効いてて面白い企画だな」程度の感想しかなかったのですが、これが一部のヤクルトファン、そして広島ファンの間でちょっとした論争の種となっています。
なぜならヤクルトファンにとっての傘応援は、彼らのアイデンティティだからです。
“燕党の魂”を使用したことに疑問
「少ないファンを多くみせたい」「どこの家にもあるからお金がかからない」などの理由で採用されたビニール傘での応援は、神宮のライトスタンドで「オヤジ」と呼ばれ愛された岡田氏の思いと物語をのせて、いまではすっかりヤクルトの名物となりました。
そんな“燕党の魂”をカープの応援アイテムとして拝借した「赤いシリーズ」に、ファンの一部から疑問の声があがったというわけです。
ヤクルトファンからは「別にかまわない」という意見がある一方で、「不快だ」「挑発としか思えない」などの厳しい声があがりました。一方の広島ファンからも「ユーモアなんだから別にいいだろう」と企画を擁護する意見の一方で、「ケンカを売ってる風にも見えるから自重したほうがいい」という声があがったりと、まさに賛否両論。
たかが応援、されど応援。いろいろ考えさせられる問題ですね。
知らず知らずに踏み入れた聖域!?
たしかに「赤いドアラ耳」や「赤いたてがみ」には「なんだこりゃ」という笑いがあります。当然「赤い傘」も同じベクトルの発想で生まれたはずですが、知らず知らずのうちに聖域に足を踏み入れていた……というのが率直なところでしょう。
そして去年の段階で疑問の声が上がっていたにも関わらず2年連続で「赤い傘」を登場させたことも、一部ファンから反発を招く原因となったのではないでしょうか。
これに関しては怒りの伏線となるような“事件”がありました。それは2015年5月16日の対横浜DeNA戦でカープが企画した「常車魂〜RED RIDING〜」というイベント。なんとこれが、ビジター応援席に貸切新幹線で来場したカープファンを入れてスタジアム全席をカープファンで埋め尽くそうとした“ビジター客締め出し企画”だったのです。
当然、「相手チームがあってこそのプロ野球なのに何を考えているのか」と野球ファン全体(カープファン含む)から批判の声があがり、謝罪のうえ企画内容は変更。わずかながらDeNAファン向けにもチケットが販売されることとなったのです。
そのイベントから1週間もたたないうちに最初の赤いミニ傘イベントは行われました。そんな経緯もあり、カープ球団の他球団に対するリスペクトの姿勢には、やや不信がつきまとうこととなったのです。