夏の間にランニングフォーム改善! 今こそ見直したいカラダの「向き」と「バランス」

三河賢文

ランニングフォームを客観的に確認する

【三河賢文】

 最近ではランニングスクールやパーソナルトレーニングなど、走り方を教わる機会が増えてきました。実際、私も直接あるいはオンラインで、ランニングの指導を行うことが少なくありません。しかし全体で見れば、そうした場で学んでいる方はごく少数です。
 フォーム改善を行うには、まず“自分のランニングフォーム”を知ることが必要となります。実際に自分がどんなフォームで走っているのか。イメージと実態は異なるもので、「こんな走り方をしていたの!?」と驚く方は多いようです。動画を撮影するなどして、自分のランニングフォームを客観的に見てみましょう。例えばそれを、トップ選手や目標とするランナーなどと比較してみてください。きっと、何か気付きが得られるはずです。

フォーム改善に向けた4つのポイント

【三河賢文】

 ランニングフォームの何を改善すべきか。それは個人によって異なります。また、「そもそも正しいフォーム」に対する考えも、専門家でさえ意見が分かれるところでしょう。ここでは私自身がフォーム改善に取り組んだ経験から、4つのポイントを取り上げます。

1)左右の筋力バランス
 利き腕・利き足などの関係もあり、左右で筋力が大きく違っている方がいます。体組成計などで計測すると分かりますが、この筋力バランスはランニングフォームにも大きく影響するもの。どうしても筋力が強い方に頼ってしまい、後ろから見ると斜めに傾いたフォームで走っている方が少なくありません。これは上半身も同様。腕振りが片方だけ力強いというランナーは、上半身の筋力バランスが偏っている可能性があるでしょう。

 例えば左脚にばかり頼って走れば、左過重となって怪我の原因にもなります。「長く走っていると、一方の脚だけが疲れてしまう」「いつも一方の足ばかり怪我している」という場合、このバランスが崩れているかもしれません。弱い方を強化することによって、このバランスを整えましょう。バランス良く走れるということは、つまり左右両足の筋肉をまんべんなく使えるということ。ランニング効率が高まるはずです。

2)着地位置
 踵からのヒールストライク、足の裏全体でのミッドフット、そしてつま先側でのフォアフットなど、着地位置についてはいろいろな見解があります。結論から言えば「自分がもっとも自然に走れる」ものが良いと考えていますが、私の場合はこれが「ミッドフット」です。

【三河賢文】

 ヒールストライクの場合、脚は身体より前に着地することとなるでしょう。すると瞬間的ですが、着地した瞬間にブレーキが掛かります。また、着地時の衝撃が膝へ伝わりやすいので、痛みを感じることがあるはずです。逆にフォアフットの場合、脹脛などの筋肉を中心として走ることとなり、スピードは出るものの疲れやすくなります。短距離走を見ると、つま先側だけで走っているのはことためです。

 では、ミッドフットはどうなのか。足の裏全体で着地するので、地面から受ける衝撃は分散されます。このとき、しっかり身体を前傾にし、体軸をまっすぐに保つことが大切。その状態で身体の真下に着地すれば、恐らく自然とミッドフットになるでしょう。ただしフォームが崩れると、足裏と地面とで摩擦が生まれてしまいます。「ザッ、ザッ」という着地音が聞こえたら、フォームが崩れているサインです。

3)着地後動作
 着地位置に加えて、着地後の動作についても触れておきます。しっかり前傾を維持してミッドフットで着地した場合、次の瞬間には踵が地面を離れているはずです。最後につま先が残るわけですが、地面を「蹴る」のではなく「押す」ようなイメージで動いてみてください。着地で生まれた地面との反発を押し返します。

 その後はストライドを後ろへと伸ばし、足首を緩めましょう。足首を緩めると脹脛の筋肉が休憩状態になり、疲れにくくなります。脹脛は小さな筋肉なので、常に緊張した状態では最後までもちません。そこでストライドを伸ばすことにより、脹脛の休憩中はお尻や腿裏の筋肉に働いてもらうのです。地面を押した後に踵を上げるようなイメージで走れば、大きなストライドが生まれてきます。

4)脚の開きによる“捻じれ”
 いつも通りに走っている際、自分の足元を見てみてください。つま先が外側に開き、“ハの字”になっていないでしょうか? 実はかなり多くのランナーが、このような状態で走っています。中には、逆に内股となっている方も。すると足首や膝などに“捻じれ”が起こり、怪我を起こしやすくなってしまいます。

 結論から言えば、つま先(さらに膝、腰、上体などカラダ全て)の向きは進行方向に向けるようにするのがオススメ。前へ走るのに対して着地時につま先が外側へ向いていると、瞬間的に足首が捻られてしまいます。そしてこの捻じれは膝にも繋がり、腸脛靭帯炎など怪我の原因になることも。試しに立った上体で、つま先を思い切り外側に向けてみてください。きっと、足首や膝に起きている“捻じれ”を感じられるはずです。これは内股の方も同様ですので、まずは立位、あるいは歩行時からつま先の向きに気を配り、矯正していくと良いでしょう。

理想のフォームをイメージして意識しながら走ること

 正しいフォームについては、さまざまな意見があります。ここではあくまで私の実戦経験にもとづき、是非とも実践していて頂きたいポイントをご紹介しました。大切なことは、理想のフォームをイメージして意識しながら走ること。また、痛みなどが起きた場合に「原因は何なのか?」を考え、改善に取り組むことです。より速く、長く、そして楽しく走れるよう、この夏はランニングフォームの改善に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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著者プロフィール

中学生の頃から陸上競技を始め、大学では十種競技選手として活動。引退後、約7年のブランクを経て2011年6月よりランニングを開始。同年にハーフマラソン、フルマラソン、翌年には100kmのウルトラマラソンやトライアスロン(オリンピック・ディスタンス)も完走。沖縄本島1周マラソンなどを始め、今では“超長距離”レースにも数多く出場している。また“トウモロコシ”や“アザラシ帽子“をトレードマークに、仮装マラソンも楽しむ。ランニングブログも不定期更新中。趣味と過去の経験を活かし、現在は東京都葛飾区内にある中学校の陸上部にて、外部コーチとして指導も行っている

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