U−16代表が感じた世界との”距離” 強豪国との試合で得た危機感と向上心

川端暁彦

初戦は4−1と良いスタートを切ったが……

00年生まれ以降の選手で構成されるU−16日本代表は鳥取県で行われた、インターナショナルドリームカップに挑んだ 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 近いと思っていたら遠かった。いや、甘かったと言うべきか。「日本の16歳」が挑んだ国際ユース大会「インターナショナルドリームカップ2016」についての感想をまとめると、そんな言葉に集約されるのかもしれない。

 2000年生まれ以降の選手で構成されるU−16日本代表(通称“00ジャパン”)。来年のFIFAU−17ワールドカップ(W杯)を目指すこのチームが、6月22日から26日にかけて鳥取県で行われたインターナショナルドリームカップに臨んだ。チームを率いるのは、かつて広島ユースの指揮官として柏木陽介、槙野智章らを育てた森山佳郎監督。今年に入ってから海外遠征を重ねて1度も負けておらず、昨年秋には欧州遠征でフランス、イングランドを死闘の末に撃破。オランダには敗れたとはいえ、チーム作りにも個の強化にも手ごたえはあった。大会に際して、選手を含めて「みんな結構自信を持っていた」(森山監督)のも当然という順風満帆ぶりだった。

 だが、待っていたのは嵐だった。ハンガリーとの初戦は4−1で圧勝。内容的にも押し続ける流れで、課題と言えば、指揮官が語った「もっと点が取れた」というもの。今年に入ってから言われていた課題も「こちらがボールを持つのは当然で、その中で最後の精度を問われる」(森山監督)ようなものばかりだったのだから、ハンガリー戦はその延長線上にある試合だったという言い方もできる。しかし継続していた順風は、次の試合から逆風へと変わった。

マリに圧倒された第2戦

「終始何もできずに終わってしまった」とマリとの第2戦を振り返った久保 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 第2戦、日本と当たったのはアフリカの新鋭国マリ。昨年のU−17W杯準優勝、U−20W杯3位という実績のある、森山監督の言葉を借りれば「現在、世界の育成年代でトップにある国」である。ある種の覚悟はあったはずだが、それでも選手たちは試合後「ショック状態」(同監督)に陥ることとなった。風上にあった前半こそチャンスも作って、MF平川怜がMF久保建英(ともにFC東京U−18)のクロスから先制点を奪うという流れだったが、逆風に向かう形となった「本当にすごい勢いできた」(GK谷晃生=ガンバ大阪ユース)後半は、中央突破から2失点を失ったほか、攻撃もまるで機能せず。記録したシュートはわずかに1本で、ペナルティーエリア内にすらほとんど侵入できないという圧倒的な内容差で敗れることとなった。

 圧倒されたのは激しくスピーディーに迫るマリのプレッシング。絶対的な身体能力の高さに加えて2人目、3人目が続く連動性もあり、「ボールを前に運べない」(森山監督)。GKの谷は「今までサッカーをやってきた中で、あんなにビルドアップが怖いというのはなかった」と言うほどの衝撃を受けていた。谷は足元の器用なGKで、後ろからつなぐプレーを本来は得意としている選手である。その彼が近い距離にパスを出したら奪われる、長いボールを蹴っても無力という状況の中で、感じたことのない恐怖を覚えていた。結果として日本は、「終始何もできずに終わってしまった」(久保)。

 前線の柱であるFW宮代大聖(川崎フロンターレU−18)もまた、「マリは今まで経験したことのないような強さだった」と戸惑っていた。本来はキープ力に秀でる選手だが、「球際のところでほとんど負けていたし、自分の通用する部分がなかった。いつもの間合いでちょっとボールをさらしたらもうダメだった」とプレー感覚の違いに驚きを隠せない様子だった。前半は得意のドリブルからチャンスを作っていた久保も、ほとんど機能させてもらえなかった後半については「自分も圧倒的に力負けしていた」と振り返り、「相手と同じ土俵に立つことすらできていなかった」と悔しさをにじませる他なかった。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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