ハリルホジッチ「優勝候補はクロアチア」 ユーロのグループリーグ総括&決勝T展望

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諦めずに戦っているチームが良い結果を残している

ハリルホジッチ監督はハンガリーの諦めない姿勢を評価した 【写真:ロイター/アフロ】

――ウェールズをはじめ、アイスランドやハンガリーのようなサプライズ国もありました。

 たしかにどの国にもチャンスがある。今のところ、一番がっかりしたチームはロシアだ。今大会は何があったのか分からないが、すべてにおいて失敗したチームだった。その他にも、ポルトガルはクリスティアーノ・ロナウドの個人技にしか頼っていない。他の選手もチームのためにプレーするより、ロナウドのためにプレーしているように思える。せっかく個人技がある選手がたくさんいるのに、そういうプレーは残念でならない。

 アイスランドはグラウンダーのショートパスサッカーができる技術を持っていないので、ロングボールを蹴ってフィジカルで勝負をするサッカーをしている。スローイン一つでも、選手をペナルティーエリア内に集めてゴールチャンスを作り出そうとするチームだ。

――成功の秘訣は100%の力(集中力、積極性、丁寧さ)を出し切ることとおっしゃいましたが、ハンガリーなどはそういうサッカーをしています。監督が率いたアルジェリアもそういう要素が強く感じられました。

 ハンガリーのロッカールームにいる訳ではないので細かいことは分からないが、一つ言えることは、今大会で良い結果を残しているチームは最後まで諦めずに戦っているチームだ。ハンガリー、ウェールズや北アイルランドなどは個人プレーに頼らず、組織でしっかりプレーをしている。逆にがっかりしたチームはロシア、ルーマニア、ポルトガル。スウェーデンも一人の選手に頼り過ぎている。

 ベルギーもまだ分からないことが多いチームだ。2試合目(アイルランド戦、3−0)の後半は良いプレーができていたが、それまでは内容がイマイチだった。その試合でも、前半と後半の内容があまりにも違ったので、あらためてハーフタイムの重要さを感じる。

本当のスタートはこれから

UEFA EURO 2016TM WOWOWアンバサダー ヴァイッド・ハリルホジッチ 【(C)WOWOW】

――決勝トーナメントが始まります。組み合わせを見てどう思いますか?

 どのチームもグループリーグの戦いには不安を抱いている。どのチームもなるべくエネルギーを消費しないで決勝トーナメントに進みたいと考えている。そういう理由もあって、「強豪国」と言われているドイツやフランスは、まだ本当の姿を見せられていないのかもしれない。

 スペインやイングランドもこれから徐々にコンディションが上がって、アグレッシブさも増していくことが考えられる。選手のモチベーションや集中力も高まっていくだろうし、私にとって、今大会の本当のスタートはこれからだ。

――フランスのディディエ・デシャン監督については?

 デシャン監督はイタリアのサッカーのように、現実主義な部分がある。ゲーム展開は美しくないが、効果的なサッカーをして勝っている。グループリーグも終わったことだし、このチームにはポテンシャルの高い選手もたくさんいるので、これから本当の姿を見られることに期待したい。

 守備ブロックが低過ぎたのは確かだ。もっとブロックを高くして、中央あたりまで上げるべきだ。ブロックを上げることができれば、もっと簡単にボールを奪うこともできて、攻撃に切り替えてゴールチャンスが生まれる。おそらくデシャン監督は経験豊富な過去を生かして、いろいろと変更してくるだろう。ノックアウト方式となった今、PK戦で次に進むという考え方はしてはいけない。チームはもっと野心的なサッカーをする必要があるし、選手はもっと勇気を出して、アグレッシブなサッカーを見せてくれないといけない。

――フランスチームから日本のサッカーが学べるものはありますか?

 残念ながらフランスはラインが下がり過ぎているので、良いモデルにはならない。ボールを奪うためのアグレッシブさも足りないし、プレスに関しても組織的な守備も物足りない。選手の距離感も悪い。もう一度言うが、日本にとってフランスはお手本にならない。

――決勝トーナメント表を見るとクロアチアが上まで行きそうとおっしゃいました。反対側はどのチームが上がってくると思いますか?

 反対側の表にはドイツ、イタリア、スペイン、フランス、イングランドなど「強豪国」と言われているチームが集まっている。反対側のクロアチアは決勝までそれらのチームと対戦しないので、本当に有利だ。この中に有利なチームはない。ドイツ、イタリア、スペイン、フランス、イングランド、どのチームが上がってきてもおかしくないし、ひょっとしたら他のチームが上がってくるかもしれない。でも有利なチームはない。

――決勝トーナメントではブラジルW杯のように、スペクタクルで面白い試合が見られると思いますか?

 いくつかのチームはもっと野心的なサッカーをする義務がある。フランス、イングランド、ドイツなどだ。イタリアは自分達のスタイルを変えることはないだろう。野心的なサッカーとは緊張がとかれて、ブレーキとなっていた要素が取り除かれて、勝つために開放的なサッカーを展開するという意味だ。

 決してPK戦に持ち込もうとか間違えた考えを持ってはいけない。攻撃面では、もう少しスペクタクルなサッカーが期待できるだろう。

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