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記録達成後、チームメートと機内で乾杯
イチロー、次のターゲットは3000安打
ピート・ローズの安打数を抜き、ベンチに戻るイチローを出迎えるボンズコーチ(左端)らチームメート
ピート・ローズの安打数を抜き、ベンチに戻るイチローを出迎えるボンズコーチ(左端)らチームメート【Getty Images】

 マーリンズのマーティン・プラードは最初、バスの中で乾杯をしたかったと言う。


「試合が終ってから落ち着いてチームだけになれる最初の時間だったから」


 それは、サンディエゴのペトコ・パークでイチローが日米通算ながらピート・ローズのメジャー通算最多安打記録(4256安打)に並び、超えた15日(現地時間)の試合後のことだが、その計画は断念せざるをえなかった。

 

「バスの中では飲み物が用意できないって言われて、そもそも空港までの距離が短いし」

 ペトコ・パークから球場までは10分ちょっと。せっかくの機会が慌ただしくなるのは誰も望まず、早々に次の選択肢に舵を切ったプラードは、ドン・マッティングリー監督に許可を求めた。


「イチローが打ったんだ。飛行機の中でシャンパンで乾杯してもいいか」


 監督がそれを拒否する理由などなかった。


「もちろんだ」


 サンディエゴからマイアミへ向かう機中、安定高度に達すると各選手のグラスにシャンパンが注がれた。


「みんな、手元に渡ったか」


 立ち上がったプラードは、確認してからグラスを掲げた。

「歴史の一部に関われたことを誇りに」

 そのちょうど10カ月前のこと。彼らは日本酒で祝杯をあげていた。2015年8月15日にイチローが日米通算でタイ・カッブの大リーグ通算安打(4191安打)をセントルイスで超えたが、それを見越して元東北楽天でプレーし、昨年はチームメートだったケーシー・マギー(現タイガース傘下3A)が、わざわざマイアミから日本酒を持ち込んでいた。


「マギーがサプライズで日本酒を用意してくれて、粋な計らいですよね。みんなで乾杯(しました)」


 あのとき、そう話したイチローは、さらにうれしそうに言っている。


「(ディー・)ゴードンなんかは、お酒飲まないのに飲んでくれて」


 今回、そのマギーもゴードン(薬物違反で出場停止中)もいなかったが、ベテランのプラードが仕切り役になった。監督から、「ならば、お前が乾杯の音頭を取れ」と言われた彼は、みんながグラスを手にしたのを見てスピーチを始めた。


 日本でも米国でも乾杯の音頭を取る人がスピーチをするのは共通だが、なんと言ったのか? と聞くと、「特にメディアに発表することではない」と彼は話したが、一言だけ教えてくれた。


「まあ、これだけは伝えたかったんだ。『みんな、歴史の一部に関われたことを誇りに思っている』って」


 さすがにイチローの頭からシャンパンをかけたり、シャンパンファイトが行われたわけではないが、それぞれがその乾杯に思いを込めた。


「4257本って、日本の安打を加えたとしても、すごい数字だと思わないか」とヤンキース時代の14年にもわずかならイチローとチームメートだったことがあるプラード。「そのことに敬意を評したかったし、日米通算だろうが、彼が祝福されるのは当然のことだ。いつか、『俺はイチローとプレーしていたんだよって』孫にも言いたい(笑)」

丹羽政善
丹羽政善

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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