- 丹羽政善
- 2016年6月16日(木) 12:04

鮮やかだった。3点を追う9回表、2死一塁で打席に入ったイチローは、パドレスの守護神フェルナンド・ロドニーの決め球、チェンジアップを捉え、ライトポール際へ糸を引くような美しいライナーを放つ。このとき、日米通算ながらイチローの安打数は4257本となり、ピート・ローズが持つ大リーグ通算最多安打4256本を更新した。
イチローが打席に入る前、1死一塁の場面で代打のジャンカルロ・スタントンがサードゴロに倒れるも、併殺を逃れたことでイチローに打席が回ったわけだが、この打席の意味を知る球場のファンは、一斉に立ち上がってイチローに声援を送った。
そういう空気の中での一打。イチローが二塁に到達すると、声援に応えてヘルメットを取る。そのとき、球場のボルテージがいっそう上がった。
多くの記者がツイッタ―で伝える
その数時間前――イチローは、初回の打席でローズに並んでいる。「1番・ライト」で先発出場したイチローは、1ボールからの2球目を打つと、それが一塁線上にボテボテの当たり。キャッチャーが飛び出したが、投げたところでイチローのスピードを考えればとうてい間に合うタイミングではなかった。イチローらしいといえば、らしい打球。その瞬間を、三塁側内野席から見ていた。三塁側からだと、ファウルなのかフェアなのか分からなかったが、思わず腰が浮く。イチローというより捕手の動きを見たが、とりあえず一塁へ投げたという感じ。それた送球の横をイチローが駆け抜けていった。
そのとき、試合開始直後ということもあって、客席はまばらだったが、三塁側の内野席を中心にスタンディングオベーションが起こる。日の丸を振っているファンもいた。
この直後から現場にいた米記者のみならず、多くのメディアが、イチローがローズに並んだことをツイッターなどで伝えた――まるで、大リーグ記録に並んだかのように。
ある記者が話していた。
「ツイートしたら、大リーグ記録じゃないじゃないか、というコメントがあった。でも、イチローを認めざるを得ない。イチローのヒットを打つ能力は、飛び抜けている」