ドラ1候補・吉川尚輝の活躍が導火線に=雑草軍団・中京学院大が日本一の快進撃

高木遊

スピードを生かしたプレーで攻守にチームの日本一に貢献した中京学院大・吉川 【写真は共同】

 6月6日から行われていた第65回全日本大学野球選手権記念大会で、東海地区学生野球連盟所属の中京学院大が、1993年の青山学院大(東都大学野球連盟)以来の初出場初優勝を飾った。その中心選手の1人として、複数球団がドラフト1位候補に挙げる遊撃手・吉川尚輝(4年・中京高)が躍動した。

敵将もプレーに取り組む姿勢を賛辞

 岐阜県学生リーグで打率4割9分を残し自身2度目の首位打者に輝くと、東海地区大学野球選手権では中京学院大を創部史上初の全国大会出場に導く決勝打を放った。そんな乗りに乗った状態で、自身の野球人生でも初めての全国大会に臨んだ吉川は、1回戦の日本文理大(九州地区大学野球連盟・北部代表)戦から攻守に輝きを放った。

 まず初回に、吉川はセンターの頭を越える三塁打で先制打を放ち勢いに乗る。すると、日本文理大・中村壽博監督が「吉川君に吸い寄せられるようでした」と振り返るように、面白いように吉川へ打球が飛び、吉川が華麗に舞う好守を連発。吉川は「神宮球場は夢のような舞台。球場に入り鳥肌が立ち、試合が始まってからも興奮していました」と屈託のない笑みを見せた。

 またプレーに取り組む姿勢面に関しても中村監督は「プロ注目選手ですが、わがままなところが一切見受けられないスポーツマンシップを持った選手という印象でした」と振り返るなど、敵将からも賛辞が贈られた。

 そして2回戦の桐蔭横浜大(神奈川野球連盟)戦では、吉川が4安打2盗塁の大活躍をし、これが他の選手への導火線となっていく。準々決勝の亜細亜大(東都大学野球連盟)戦は吉川が内野安打1本に終わったものの、打線が12安打を浴びせ5点を挙げると、エース左腕の柳川優太(4年・大垣日大高)も1失点完投勝利。大会そのもの自体が、吉川擁する中京学院大を中心に回っているかのような空気になっていった。

試合ごとに自信をつけた選手たち

 特にそれが顕著に表れたのが準決勝の奈良学園大(近畿学生野球連盟)戦だ。初回に吉川のタイムリーで先制した中京学院大だったが、8回を終わって2対4。だが9回に小兵の代打・大向繁利(2年・花巻東高)の安打を皮切りに打線がつながり1点を返すと、なおも2死一、三塁で打席には吉川。ここで奈良学園大は、逆転の走者を二塁に送ってでも吉川を敬遠。すると続く4番の石坂友貴(3年・中京高)にタイムリーが飛び出し、5対4の劇的逆転勝ちを収めた。

 怖いもの知らずで快進撃を続ける選手たちに近藤正監督は「選手たちが試合ごとに自信をつけている」と目を細めた。またその影響はプレー面だけではない。リーグ戦中は座って戦況を見ていた選手たちがベンチから身を乗り出してグラウンド上の選手に声をかけるようになり、ベンチ外部員によるスタンドの声援も注目度とともに大きくなっていった。

 すると決勝戦の中央学院大(千葉県大学野球連盟)戦でも、その勢いは止まることはなかった。準決勝まで4試合で3失点、被安打わずか13本に抑えてきた中央学院大投手陣から、吉川の1安打を含む12安打を放ち、5対2で快勝。胴上げ投手となった柳川に一目散に駆け寄った吉川の笑顔が弾けた。

1/2ページ

著者プロフィール

1988年、東京都生まれ。幼い頃よりスポーツ観戦に勤しみ、東洋大学社会学部卒業後、スポーツライターとして活動を開始。関東を中心に全国各地の大学野球を精力的に取材。中学、高校、社会人などアマチュア野球全般やラグビーなども取材領域とする。

スポーツナビからのお知らせ

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント