【新日本プロレス】永田流“ストロングスタイル”の意味 その本質を柴田勝頼との戦いで見せる

スポーツナビ

戦いには変えてはいけない本質もある

NEVERは興味がなかったのだが、柴田が巻いたことで、流れが変わってきた 【スポーツナビ】

――今回の戦いは“ストロングスタイル”がテーマということですが、NEVER王座についてはどのようなイメージを持っていたのでしょうか? それこそ過去には田中将斗選手(ZERO1)、石井智宏選手、真壁刀義選手らがベルトを巻いて、徐々にチャンピオンの色が出てきていたと思いますが?

 最初はあんまり興味なかったですけど、いい試合をするなと思っていました。今後どういう風になっていくかなと気にはなりましたが、本格的には見てなかったです。

 ただ柴田がベルトを取ってからですね。僕が興味を惹かれだしたのは。小島(聡)選手と天山(広吉)選手が挑戦した試合を見て、NEVERは「あれ、このベルトの、この戦いは、かつてのIWGPだな」と、すごく感じたんですよ。かつて僕らや先輩たちが後輩との戦いの中で、IWGPヘビーのベルトを懸けてやっていた戦いだなと。それを柴田vs.小島、柴田vs.天山で見せられて、あの辺から急に惹かれましたね。

――柴田選手が“第三世代”の選手たちと争う中で、NEVER王座の意味合いが変わってきた?

 少なくとも僕は惹かれましたね。このベルトにもIWGPの理念がしっかり残っているんだと。根本的に僕は、以前から本当はIWGP一本なんですよ。
 ところが昨年インターコンチに挑戦した時は、中邑(真輔)が王者でした。誰がいつ挑戦してくるか分からない、挑戦してくるのはとんでもないやつ、想像できない選手が来て、「この試合、どうなるんだ?」という、想像ができない戦い。そういう戦いを中邑が実践していたのを見て、興味を惹かれ、挑戦した経緯もありました。今回はやはり、小島選手と天山選手のタイトルマッチを見て、「これってIWGPだよな」と。

 尚且つ、4月の両国で内藤(哲也)がIWGPの新チャンピオンになって、確かに内藤の支持率とか、ここ数年はIWGPが決まった人間しか戦ってこなかったという、現状をぶち破ったことで、内藤をお客さんは支持したし、盛り上がった戦いだった。ただ、いざ試合となると、乱入とか介入はどうなのかなと。それは僕だけじゃなく、ファンの人もそうだと思うし、どこかでクエスチョンを持ちながら、内藤の戴冠劇を喜んでいたんじゃないのかなと思うんですよ。

 そういううやむやな気持ちをすっきりさせていたのが、あの日の天山vs.柴田の試合だったんじゃないかと、すごく思いましたね。

――ベルトの名称は変わりませんが、持つ王者によって内実は変わると?

 そうですね。セコンドを介入させても、それをチャンピオンが打ち破ってきたという歴史はありますが、あのように立て続けにやって、それをファンが支持するという光景は今までなかったと思うんですよ。ただその大会で、蝶野(正洋)さんがテレビ解説をしていて「これはない」と言われていましたけど、やはり蝶野さんにしろ、僕らのような、かつてIWGPを争った戦いの中では、なかなか見られなかった勝ち方だったんじゃないかなと。
 戦いの本質で変わってはいけない部分がある。彼らがそういう形で進化するのなら、僕らが、そういうのを掘り起こして、これだぞってものを見せればいいのかなと思い、あの大会を機に、考えが変わってきましたね。

“ストロングスタイル”を持ち出した理由

NEVERのベルトは“第三世代”の4人で取ったのと同じ意味 【横田修平】

――ベルト毎に戦いのスタイルがある中で、現状、一番惹かれたのがNEVER王座だったと?

 そうですね。同世代が挑戦してあれだけのことをやってくれた。そして僕が挑戦してベルトを取ることができたので、これは僕ら同世代4人で取ったベルトだと思っています。ならばこのベルトをIWGP以上のものにするのもいいかなと。

――実際、永田選手が最後にIWGPを巻いていたのが2007年10月。その後はタッグのベルトこそ取ったものの、シングルのベルトからは遠ざかっていました。改めてベルトが目の前に置かれたことで、流れが変わってきたと?

 ベルトが目の前に置かれたというよりは、僕がベルトを取ってその流れを、流れというかファンから見る光景を変えることができるんだと、自分はやってきました。

 それこそIWGPを失ってから8、9年経ったわけですが、その間にベルトを取らなかったわけでなく、他団体のZERO1のベルトを取ったり、最近だと2年前にGHCのベルトを取ったわけですよ。それでベルトを巻いたものの責任として、ノアだったら緑のマットを青く染めたし、永田裕志を応援するお客さんをノアの会場に呼び込んで、空気感を作りだして、ノアを盛り上げたという自負はあります。

 だから今、NEVERのベルトを取って、これをどうするか。ちょうどそれを戦いながら、楽しんで自分色にしている最中ですよね。

――今はNEVERのベルトを自分色に染めていく最中だと。ただ現状、新日本には3つのベルトがあるのですが、『ミスターIWGP』と呼ばれた永田選手にとって、現状をどう捉えていますか?

 その辺は興行的な話もあって、全国の大都市でビッグマッチがある機会が増えて、1シリーズで2回、3回とタイトルマッチができるのは大きいですよね。
 ただそこには、各ベルトを持つ人間の競争もあると思うんですよ。各ベルトが光輝くのか、輝きが落ちていくのか。そういう競争意識があっていいと思っています。やはり競争意識、対抗意識というのは、新日本プロレスの伝統。先程も言ったとおり“ストロングスタイル”の原点であるので。

 最初は名前がなかったインターコンチネンタルのベルト、そしてNEVERのベルトも、巻くチャンピオンによって変わってきているのは、戦いの歴史が積み重なっていることの成果なのでしょう。だからIWGPを取ったからといって、王者は油断できないですよね。

――永田選手としては、その中でNEVER王座を“ストロングスタイル”を追求した戦いにしたいと。

 それでいいんじゃないかと思いますよ。僕と柴田だからできるというか。それに天山なり、小島さんなりを意識して戦う。自分達を思いっきり披露したいという気持ちで戦い、そうなりました。

 あと“ストロングスタイル”という言葉を出したきっかけのひとつに、中邑が米国に行って、彼の称号としての「キング・オブ・ストロングスタイル」を、WWEが商標を取ったとか取らないとか。新日本が“ストロングスタイル”を脱却したのはありますけど、その言葉を向こうに取られてしまうのは、なんか寂しいなと。新日本はそういうことはしませんが、僕の中でそういう思いはあったんですよ。

 僕らが若い頃は、常に“ストロングスタイル”を頭において、自分達をどうやって構築していくか、考えに考えて戦ってきた大きな言葉だったので。

 そんな今だからこそ、新日本プロレスのリングで、あえて“ストロングスタイル”を出してみたいなと思いましたよね。僕自身のこだわりとしてね。

目標は50代でのIWGP王座戴冠

今回はNEVERのベルトを腰に巻いたが、最大の目標はいつでも「IWGP」だと話す 【横田修平】

――今回NEVER王座を戴冠している中で、永田選手の目標はどんなことになるのでしょうか?

 自分のレスラー生活の目標というのは、あります。ありますというか、それは今回こそNEVERの王者になって、前回はインターコンチに挑戦しましたが、そこは「本気の浮気」なんですよ(笑)。僕にとっては。
 僕にとっての本命はIWGPなんですよ。それこそ50歳を過ぎての、50代のIWGP王者という、最大で、とてつもない僕の壮大な夢というか、それがあるので常に意識しています。

 天龍源一郎さんが、49歳10カ月でIWGP王者になったのを目の当たりにしています(1999年12月)。いろいろな記録を作って、塗り替えられたりもしましたけど、じゃあ今度は追いかける立場になったならば、それを抜きたいなと思っています。是非、これはやり遂げたいです。これがレスラー人生で最大の目標、大目標ですね。

――先日のライオンズゲート(5.19新宿FACE大会)では「若手選手の高い壁でいたい」とも言っていましたが、やはりいつまでも高い壁でいたいと。

 そういう意味ですね。

――若い選手が立ち向かってくることは刺激になる?

 それがあるから長くできるんでしょうね。負けてなるものかと。やっぱり若い選手を意識して、自分はそれよりも上を目指したいという思いがある限り、まだまだいけそうな気がしますよ。

――ファンもそれを臨んでいますよね。新日本は新しいファンが増えていますが、やはり今まで培ってきたものを見せることも求められていると。

 そういうファンの方たちに永田裕志というものを見せ付けるには、明るく元気な、とんでもない親父の底力を、子供達にはとんでもない親父の背中というものを、リングを通じて見せていけたらなと。「なんだよこいつ、48なのに、こんなにすごいのかよ!」と。昔は年齢を言われるのが嫌だったのですが、今は逆に心地よいですね。“アンチエイジング”を言っていた頃はそれがうっとおしかったですけど、今は自分で開き直って、それが心地よいです。

――それでは最後に、ファンの方へ大阪城ホール大会に向けての意気込みをお願いします。

 大阪城ホールは、ある意味今回、初見参の大舞台なので、そこで永田裕志の何たるかを、柴田勝頼と戦うことで、大阪にお集まりのファンの皆様、日本全国の皆様、「新日本プロレスワールド」を通じて全世界に向けて発信していきたいと思います。必ず勝ちます!

(取材・文:尾柴広紀/スポーツナビ)

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