プロ野球地方ゲームの舞台裏――15年連続開催、豊橋市がクリアした課題
最も気を使うのは「芝」の管理
10,267人の豊橋のファンが今年も地元で開催されるプロ野球を楽しんだ 【写真=BBM】
「ドラゴンズのグラウンドキーパーの方が来られて、グラウンド、芝、施設などの状況を確認していただいています。もし大幅な改修をするのであれば球団に申し入れが必要になるでしょう」
すでに02年から15年連続で公式戦を開催している実績から、近年では豊橋市民球場でのナイター開催はスムーズに進んでいる。そうしたなかで、球場側が準備に際して気を使っているのが「芝」だと言う。高麗芝という天然芝を採用しているが、日本の高温多湿な環境下でも強い半面、生育に時間がかかってしまう。そうした都合もあり、豊橋市民球場では試合前の1カ月間は球場をクローズドする期間を設けている。今年は4月18日から試合の前日の5月24日までを養生期間にあて、外野の芝をしっかりと育てた状態で試合を迎えた。
「高校野球などアマチュアの試合を開催すると、どうしてもプロの定位置よりも前の外野部分の芝が削れてしまい、プロ公式戦でイレギュラーの原因になる。天然芝のコンディションを考えたら使わせないのが一番です。しかし、市民球場ですので、そんなわけにはいきません」と小島氏は言う。
4月から5月は、高校野球の春季大会が開催される時期となる。市民球場が使えないことに不満の声も出るだろう。そうした声にも球場側は配慮を怠らない。
「もちろん、市民の利用者からはそういった声はあります。球場利用者にも阻害にならないようプロ野球も無事開催する。その両者のぎりぎりの線が1カ月です。ただ、スポーツを広くとらえると、実際にプレーするだけでなく、観るスポーツという考え方もあります。プロの試合を観る満足感は大きいはずです。市民の活動の妨げにならないように、両立させていくことが悩ましいところです」(小島氏)
「プロの試合を観る満足感は大きい」
磁気反転式のスコアボードの下には反射対策として照明機材が取り付けられている 【写真=BBM】
プロ野球と地元をつなぐ場所として地方球場は欠かせない存在だ。豊橋市民球場は、地方に定着した公式戦の舞台をこれからも担っていくことだろう。
(取材・構成=滝川和臣 写真=BBM)