減少傾向にあるプロ野球の地方開催 考えるべき「文化的公共財」の意義
岡山県、長野県で大幅減少
【ベースボール・タイムズ】
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特に変動が大きいのが岡山県と長野県だ。06年に7試合が実施された岡山県では、今年は1試合のみで、しかも雨天中止(4月21日)。95年に倉敷マスカットスタジアムが完成して以降、同球場で継続的に試合が行われているが、広島の主催試合が廃止された08年以降は年1試合の阪神主催試合が恒例となっている。同じく長野県も、06年には5試合が行われたが、今年は7月12日に長野オリンピックスタジアムで行われる東京ヤクルト対阪神の1試合のみ。毎年、平塚などで試合が行われていた神奈川県も、今年は予定が組まれていない。
地方開催が球団の負担に
年に1度の開催で客席は満員になることが多いとはいえ、そもそも球場の収容人数が少なく、それに加えて準備段階における手間や費用、さらに雨天中止のリスクも背負わなければならない。かつては親会社の宣伝効果や地方との関係性構築などから採算を度外視していた面もあったが、近年は選手の移動、宿泊などにかかる経費も考えて地方遠征を避ける球団が増えている。連日、パ・リーグ球団でもひと昔前では考えられないような数のファンで球場が埋め尽くされていることを考えても、手間も経費も大きくはかからない本拠地開催の方が、確実に儲かるのだ。
だが、果たして“儲かればいい”のだろうか。過去、プロ野球の地方開催が、野球人気の拡大と野球人口の増加、ひいては競技レベルの向上に貢献してきたことは間違いない。そして80年の歴史を鑑みるに、NPBが野球協約にうたう「文化的公共財」との認識も納得できる。その観点から考えると、金銭面の理由で地方を切り捨て、置き去りにすることは理念に反するだろう。
自民党が14年に地方活性化の観点から「プロ野球16球団構想」を提言し、今年2月には石破茂地方創生相も前向きな姿勢を見せた。実現の可否は度外視するが、プロ野球と地方の関わり方を今一度、考えてもいい頃だ。10年後、20年後も、地方球場はファンにとって欠かせない場所であるはずだ。
(文・三和直樹、グラフィックデザイン・山崎理美)