元南海・山内孝徳氏が育てる注目右腕 谷川昌希を“雑草の花”にするために
山内孝徳氏が手塩にかけるドラフト候補
入社1年目のシーズンでは補強選手として都市対抗に出場した谷川。今年はチームの都市対抗出場、そして秋のドラフト指名を目指している 【写真=高木遊】
そう穏やかな笑顔で語るのは、九州三菱自動車の入社2年目で今秋のドラフト候補に挙がる右腕の谷川昌希だ。
東京農業大時代から、その好素材に期待は高かったが、故障や調子の波が激しかったため、東都大学2部リーグでは5勝12敗という成績に終わった。
だが、九州三菱自動車に入社し、西部ガスの補強選手として出場した都市対抗で谷川は1イニングながら、140キロ台後半の威力あるストレートを次々に投げ込み、学生時代とは、まったく違う姿を見せた。その背景を知ろうと本人に尋ねると、ある人物の存在が挙がった。
それが、1980年代の南海ホークス(現:福岡ソフトバンク)を闘志むき出しの投球で支え、通算100勝を挙げた山内孝徳氏だ。現役引退後は野球解説者としてホークスファンにはおなじみで、2014年にソフトバンクの2軍投手チーフコーチも歴任した。
そんな山内氏は、昨年から九州三菱自動車の投手コーチに就任。時を同じくして入社したのが、谷川だった。
「お客様優先」のスケジュール
ともに九州三菱自動車で2年目のシーズンを過ごす山内氏(左)と谷川 【写真=高木遊】
「みんな真面目で人柄が良いチームだなというのが第一印象だね。社会人野球は“仕事あっての野球”というのが僕のポリシーだけど、それでも大変だと思うよ」
そう山内氏が語るように、九州三菱自動車の選手たちの1日のスケジュールは、びっしりと詰まっている。朝の8時半から練習が始まり、午後から仕事へ。平日は外回りの営業、土日は販売店で接客をこなす。仕事の終業は夜8時や9時になる。あくまでお客様優先のため、練習中に電話がかかってきて対応にあたることもある。
「バイトもほとんどやったことが無いので、先輩を見て勉強して、支えてもらって、時に怒られながらという感じです」と谷川は苦笑いするが「でも勤務先の方々やお客様も応援してくれますし、こうして山内さんにも出会えた。ここに来て本当に良かったです」と満面の笑みで続けた。
それだけ今の谷川に山内氏の存在は欠かせないものとなっている。