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「形」が曖昧だった全日本女子=バレー
五輪まで限られた時間で求められる進化

首の皮1枚でつながった、五輪本大会の切符

イタリア戦でフルセットの末に敗れた日本は、1ポイントを獲得し、リオ五輪の出場権を獲得した
イタリア戦でフルセットの末に敗れた日本は、1ポイントを獲得し、リオ五輪の出場権を獲得した【坂本清】

 勝ち点を手にすることができずに連敗を喫すれば、ここで終わり。5月21日のイタリア戦、そして最終日のオランダ戦、さらに日本よりも前に戦うタイ戦の結果次第では、五輪出場を逸する可能性もある。


 最悪の事態も、頭によぎる。


 不安を払拭(ふっしょく)させるべく、眞鍋政義監督は選手たちに言った。

「五輪の出場権は、自分たちでつかみにいかないと手に入れることはできない。今日は思い切って攻めよう」


 イタリア戦でのポイント獲得の立役者は、主将の木村沙織だった。


 セッターの宮下遥が高めに浮かせたトスを高い打点でとらえ、クロス、ストレートへ伸びやかなフォームで打ち分ける。眞鍋監督に「久しぶりにすごいスパイクを打っていた。背中から炎が見えた」と言わしめた、圧巻のパフォーマンスでチームをけん引。フルセットで敗れはしたが、1ポイントを獲得したことで、タイの成績を上回ることが確定した。


 まさに首の皮1枚でつながった、五輪本大会の切符。木村は喜びよりも先に安堵(あんど)した。

「本音を言えば(イタリアに)勝って決めたかった。でも、最終日までもつれずに決めることができて、それはすごく、すごく良かったです」

 どんな形でも勝てればいい。大会前から自分に言い聞かせるように、何度もそう言い続けてきた。自身にとって4度目の五輪出場権を手にするための戦いは、それだけ苦しく、厳しい道のりだった。


 内容よりも結果が問われる大会とはいえ、日本はなぜ、これほどまでの苦戦を強いられたのか。理由はいくつもあるが、1つは、チームとしての「形」がなかなか構築されなかったことだ。


 たとえば、韓国ならばキム・ヨンギョンという大砲がいて、その得点源を最大に生かすために各々が何をすべきかが明確にされている。オランダは高さという最大の武器を生かした守備と攻撃が組織的に形成されている。


 では日本はどうか。


 サーブの狙い目や相手のスパイクに対するディフェンスなど、綿密な戦術が練られてはいたが、試合が始まれば予測不能の事態も起こる。そこでどう対応するか。それこそが、チームの「形」や戦い方が問われる状況でもある。

韓国戦の敗戦は必然の結果

韓国戦ではキム・ヨンギョン(左)を中心とする相手の攻撃に対するディフェンスに加え、サーブで攻められたことも敗因の1つとなった
韓国戦ではキム・ヨンギョン(左)を中心とする相手の攻撃に対するディフェンスに加え、サーブで攻められたことも敗因の1つとなった【Getty Images】

 初黒星を喫した5月17日の韓国戦はまさにそんな一戦だった。


 当初、日本はエースのキム・ヨンギョンがレフトからミドルに切り込んで打つ攻撃に加え、得意のインナーにスパイクを打ち込むだろうと予測していた。だが、数多くの対戦機会と、試合時のディフェンスシフトを見てキムは「(インナーには)レシーバーが入っていたので、あそこに打たないほうがいいと思って打つコースを変えた」と言うように、ブロックの横を抜くのではなく、ブロッカーの指先に当ててコートの奥を狙ってきた。


 加えて、セッターのイ・ヒョヒが他の攻撃をうまく織り交ぜたことで、日本は守備体系を崩され、「対応できずにバタバタしているうちに、ヨンギョンに上から打たれた」とミドルブロッカーの荒木絵里香は振り返る。


 さらに韓国戦では、相手の攻撃に対するディフェンスだけでなく、サーブで攻められたことも敗因の1つだ。


 特にキム・ヒジンのドライブ回転がかかったサーブを後方へ大きく弾く場面が多く見られた。もちろん攻めるべきポイントを攻めてきたサーバーを褒めるべきであり、それを上回るような攻めのサーブを日本が打てていなかったことも敗れた一因ではあるのだが、このサーブに対しても日本のレセプション体系が曖昧だった、と古賀紗理那は明かす。


「お互いがどこまでボールを取りにいくか、というのが、そこまでちゃんと定められていませんでした。だから前後のボールは対応できても、横に打たれるボールは『調子がいい方がいけるところまでいこう』と言い合っていた。いける、と思っても遠慮してしまったり、間を狙われたボールを『私がいったほうが良かったかな』と思っているうちに、またサーブで攻められる。動きに迷いが出てしまいました」


 チームとしての形が曖昧で、不安や迷いが生じ、悪循環を招く。4年ぶりに喫した韓国戦での敗戦は、偶然ではなく必然の結果でもあった。

田中夕子

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など、女子アスリートの著書や、前橋育英高校野球部・荒井直樹監督の『当たり前の積み重ねが本物になる』では構成を担当

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