注目は長野の横山久美、I神戸の杉田妃和 新生なでしこ、招集が期待される選手たち
「方向転換力」に優れた19歳の杉田
INAC神戸の杉田は、2年前に優勝したU−17女子W杯で日本代表のキャプテンを務めている 【写真は共同】
「INACの先輩たちのプレーは、速くて正確。そのテンポに合わせようとすると、自分のアイディアがうまく浮かんでこなかった。自分を表現できず、周りとも合わせられず、悪循環に陥っていました」
杉田自身、自分に物足りなさを感じていた1年目であったが、シーズン終盤にはようやく自分の色を出し始めた。そして迎えた今季、INACの松田岳夫監督が「今年の杉田はすごくよくなっている」とシーズン開幕前に評価したとおりの活躍を見せる。昨季まで澤穂希さんが務めたボランチのポジションで全9試合に出場(うち8試合で先発)、今ではチームの中軸を担っている。
杉田の特徴を一言で表すのは難しいが、あえて絞れば「方向転換力」と言えるだろうか。自分の体の向きとは違うコースに、強いパスを出せる。相手に体をぶつけられながらでも、ボールにスピードに乗せて味方に渡すことができる。いずれも不十分な体勢から、スピードと距離を生むキックを蹴れるのが杉田の強みだ。また、ドリブルで自らボールを運ぶ時も、足の裏でボールを引く技を使って相手をかわし、予想とは違った方向にボールを送る。パスワークが生命線となるなでしこジャパンにおいて、杉田はそのパスワークのハブとなるボランチのポジションにうってつけの選手だ。言い方を変えれば、杉田のリズム、杉田の狙いを周囲が早く理解することが、新生なでしこのスタイル確立への近道でもある。
首位ベレーザからは、籾木、村松、坂口が招集か?
今季から日テレ・ベレーザの10番を背負っている籾木 【写真:田村翔/アフロスポーツ】
現在、なでしこリーグで首位を走る日テレ・ベレーザにも有望な若手選手がそろっている。今季からベレーザの10番を背負ったMF籾木結花(20)は左利きの選手で、サイドから内へ切れ込んでの強烈なシュートが魅力。21歳のセンターバック村松智子は、俊足を武器に相手の突破を食い止める。さらに、ベテランの域に達しつつある阪口夢穂(28)は、駆け引きの面で申し分ないプレーができるのはもちろん、12年前にスペランツァFC大阪高槻で高倉とともにチームメートとしてプレーしていたこともあり、首脳陣と選手との間をつなぐ役割としても最適だ。
さらに、伊賀FCくノ一のMF杉田亜未(24)、浦和レッズレディースの猶本光(22)など、佐々木則夫監督体制でも招集歴のある選手たちは、代表に定着できるだけの力をつけている。ベテランでは、相手の狙いを察知しながら熟練のプレーでチームに確実性をもたらしている、アルビレックス新潟レディースの上尾野辺めぐみ(30)を挙げておきたい。
ここですべてを紹介することはできないが、他にもたくさんの選手が、毎週、なでしこリーグで魅力あるプレーを披露している。今季からは各試合のハイライト映像もネットで無料配信されているので、気になる選手を見つけて、その活躍を現地または中継で確かめてみてはいかがだろうか。
なでしこジャパンは、遠征直前の5月29日までなでしこリーグを戦い、合宿を行わずに米国へと旅立つ。そのため、選手間の連携などは未熟なまま米国戦を迎えることになる。正直、高倉なでしこの新コンセプトなどは見えにくい試合になると思われるが、それでも注目点はある。それは選手個々のバトル、ハードワーク、駆け引きなどの面で、米国相手にどの程度の力を発揮できるかが、この2試合のポイントとなるだろう。