- F1速報
- 2016年5月18日(水) 10:00

5月15日は、きっと“メモリアル・デー”になる。衝撃の開始30秒にメルセデス勢が4コーナーで全滅。歓喜の111分レースでマックス・フェルスタッペンが初優勝。レッドブルへ緊急移籍した24戦目の18歳オランダ少年が、世界最速ドライバーとして名を刻んだ記憶に残るレース。
第5戦スペインGPは、ここまで繰り返されてきたパターンを突き破るゲームで始まった。ピット戦略にも中盤変化が加わり、最後はコース全域で「トップ2」と「セカンド2」の4人がコンマ数秒内のドライバーズレースを展開。あらゆる予測やデータ情報、分析シミュレーションを覆すハラハラドキドキの攻防をリアルに見るF1スポーツの醍醐味。新鮮さと懐かしさが入りまじるなか、10代のフェルスタッペンが勝ってしまった。
新たなマシンで臨んだレース
勝因を3つ挙げよう。勝因1は、『無欲な態度』。実走テストなしのマシンで心掛けたのはトロ・ロッソとの違いを早くつかむこと。フリー走行1回目で29周、レッドブルのダイナミック・ダウンフォースに驚いた彼はセクター1で試した。どのラインでも安定して強い風にも耐えられる。先輩ダニエル・リカルドよりアクセル開度が高い。だが、7つコーナーのあるセクター3では敵わない。TAGホイヤー(ルノー製パワーユニット)はフェラーリ製と中速域ドライバビリティが違い、それはエンジニアからのデータで学ぶしかない。新入生は謙虚に初対面の彼らと接したという。スペインGPは出発点、テストととらえればいいと無欲に真っ白な気持ちで臨んだ金曜だった。
まわりが騒がしくなった土曜。勝因2は、『落ち着き』。リカルドとの走行データ上の違いはセクター3にあった。それを意識してセッティングをいじると全体バランスが狂う。あせらずに良い部分は生かし、欲をかかずに行くことだ。この見極めが若い未経験者には難しい。父ヨスも元F1ドライバーで、幻に終わった「1999年ホンダF1開発ドライバー時代」がある。ベネトン現役期と違うヨスのテスター能力、その沈着冷静な判断指示能力をマックスはDNAに受け継いでいるのかもしれない。予選では最終的に、先輩に0.407秒の大差をつけられても平然と言ってのけた。「僕は、まだ限界を探る階段を上っているところですから」。こういう言葉を発する落ち着いた態度は並の新鋭ではない。