明暗分かれるニューヨークの両チーム 躍進メッツと低迷ヤンキースの今後は?

杉浦大介

苦々しい表情のヤンキースGM

ヤンキースはアレックス・ロドリゲス(写真)らベテラン勢が不振 【Getty Images】

「私たちがこんなチームだとは誰も思っていない。これほどのタレントを持ちながら、今の位置にいることは誰にとっても驚きのはずだ」

 5月12日(現地時間)、ヤンキー・スタジアムでのロイヤルズ戦前、ヤンキースのブライアン・キャッシュマンGMは苦々しい顔でそう語った。

 そんな表情が象徴的なように、今季のヤンキースはここまで33戦で14勝19敗と低迷中。現時点で地区最下位に沈み、首位オリオールズに早くも7ゲーム差を付けられている。正直、キャッシュマンGM、ジョー・ジラルディ監督の去就がもっと話題にならないのが不思議なくらいの厳しい状況だ。

 そんな中でも好材料がないわけではない。先発投手陣の中では、田中将大がここまで7先発中6戦で自責点2以下、防御率3.11と好内容の投球を続けている。

「田中は去年より良いピッチングをしているね。スライダー、スプリッターのキレが良い。正直、(一昨年は)すぐにでも手術を受けるべきだと思ったが、少なくとも今の彼は身体を気にしながら投げているようには見えない」

 あるMLBスカウトがそう語っていた通り、一昨年に発症した右ひじ靭帯部分断裂はもうほとんどニュースにもならなくなった。そんな田中が、今後もこのまま安定してマウンドを守る可能性は低くないのではないか。

ベテランの主力勢は軒並み不振

 また、5月9日には家庭内暴力疑惑で30試合の出場停止を受けていたアロルディス・チャプマンがメジャー復帰。最初の2登板で38球中、100マイル(約161キロ)以上が15球という速球王ぶりを披露してファンを喜ばせている。アンドルー・ミラー、デリン・ベタンセス、そしてチャプマンと続く救援トリオのおかげで、ファンには試合終了の瞬間までスタジアムに残る理由ができた。

 ただ……田中の復調、チャプマンのカムバック以外に、ヤンキースにとってポジティブな要素は多いとは言えない。

 マイケル・ピネダが1勝4敗で防御率6.28、ルイス・セベリノは0勝5敗で同6.12と、田中に次ぐ2、3番手を努めるはずだった先発投手たちは大誤算。打線もアレックス・ロドリゲス(40歳/打率1割9分4厘)、マーク・テシェイラ(36歳/打率1割9分4厘)、カルロス・ベルトラン(39歳/打率2割5分6厘)、チェース・ヘドリー(32歳/打率1割9分4厘)ら主力打者は軒並み不振を囲っている。

 12日時点、総得点はア・リーグ15チーム中11位(127点)、防御率も同11位(4.34)。もともと優勝を狙うのは難しいという見方は少なくなかったが、それでもここまでの深みに沈んでいるのは計算外。高齢選手が多いゆえに、今後の伸びしろも微妙で、今季はこのままプレーオフ争いから取り残されることも十分に考えられそうだ。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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