武豊ラニ9着、最後の伸びに希望の光見た 奥野庸介のケンタッキーダービー回顧

JRA-VAN

1番人気ナイキスト、8戦無敗の戴冠

1番人気のナイキストが優勝。8戦無敗と圧倒的な力を見せた 【photo by Tomoya Moriuchi】

 史上2番目となる16万7227人の大観衆を集めた第142回ケンタッキーダービー(チャーチルダウンズ競馬場、ダート10ハロン)は単勝3.3倍の1番人気に推されたナイキストが3番手追走から直線で抜け出して優勝。全米3歳馬の頂点に立った。

 大外枠から飛び出したダンジングキャンディーに先頭を譲って2番手で最初のコーナーに入ったナイキストと鞍上のグティエレス騎手は、向正面で2番手に上がったガンランナーを仮想敵に見立ててレースを運んだ。

 縦長になった馬群は最初の4ハロンを45秒72、6ハロンを1分10秒40で通過。ナイキストは、このハイペースを楽に乗りきり、直線に向くやいなや、先頭を行くガンランナーを外から一気に抜き去って栄光のゴールに突き進んだ。

 東の王者モヘイメンを一蹴した前走のG1フロリダダービーの結果を持ち出すまでもなく、能力はこの距離でも頭ひとつ抜けていた。

 最終コーナーで最内から外に馬を出して残り100mでナイキストとの差を詰めた“西のナンバー2”エグザジャレイターが1馬身1/4差の2着に健闘。2着から3馬身1/4差遅れてガンランナー。4着にモヘイメンが入り、4着までは人気順での入線となった。

 良馬場の勝ちタイムは2分01秒31。D.オニール調教師とM.グティエレス騎手のコンビは2012年のアイルハヴアナザー(のちに2冠を達成、輸入種牡馬)に続き2度目の制覇。父のアンクルモーは初年度産駒から3冠を狙える大物を送り出した。

 不敗のケンタッキーダービー制覇は、1915年の牝馬リグレット(デビューから4連勝で優勝)、1922年のモーヴィック(2歳時11連勝で3歳初戦のケンタッキーダービーに優勝)、そして、第2次大戦後では1969年のマジェスティックプリンス(6連勝)、1977年のシアトルスルー(7連勝)、2004年のスマーティジョーンズ(7連勝)、2006年のバーバロ(6連勝)、2008年のビッグブラウン(4連勝)に続き史上8頭目。8戦無敗の戴冠は三冠馬シアトルスルーを上回る大記録であり、G1BCジュヴェナイルを制した2歳王者の優勝も2007年のストリートセンスに続く史上2頭目の快挙となった。

 ナイキストは、これまでと同様にライバルと真正面からぶつかって、力でねじ伏せた。まさに「盤石」と呼ぶに相応しい強さである。グレイソヴリン系の父と早熟だった母の父フォレストリーという血統背景から常に距離不安が囁かれる同馬だが、次はコースも小回りになるG1プリークネスS(5月21日、ピムリコ競馬場、ダート9.5ハロン)。2冠と9連勝が見えている。

ラニ、次戦はG1ベルモントS

武豊騎乗のラニは9着も初物づくしのレースで善戦したと言える 【photo by Tomoya Moriuchi】

 スタートで遅れたラニは徐々にポジションを上げ、最終コーナーでは外に振られながら直線で懸命に追い上げ、勝ち馬から約10馬身半差の9着でレースを終えた。初物づくしに加えて滑って不慣れな馬場を思うと善戦と言える内容だった。ラニはG1プリークネスSをスキップして6月11日のG1ベルモントS(ベルモントパーク競馬場、ダート12ハロン)に直行する予定と聞くが、諦めずに伸びてきた脚色に希望の光が灯っている。

 人馬ともにレベルの高い闘いを繰り広げる西海岸を本拠にする馬の優勝は、カリフォルニアクローム、アメリカンファラオに続いて3年連続。これは決して偶然ではないように思える。
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