早熟の天才ブライス・ハーパー 真のスターへ、残るはプレーオフの壁

杉浦大介

23歳にして完全開花

昨季MVP、今季も4月MVPを獲得するなど順調な成長を見せるハーパー 【Getty Images】

 鳴り物入りのスーパースター候補が次々と現れる米スポーツ界でも、事前の期待に応えてくれる選手はほとんどいない。そんな中で、期待に応えるだけでなく、超えてしまう可能性がある数少ない例がブライス・ハーパーである。

 16歳だった2009年6月、“選ばれし男”と銘打たれてスポーツ・イラストレイテッド誌の表紙を飾ったのが伝説のスタート。以降、10年のドラフト全体1位でナショナルズ入り、12年に19歳でメジャー昇格、1年目から22本塁打で新人王獲得……とハーパーは順調に階段を上ってきた。

 昨季は打率3割3分、42本塁打、99打点という素晴らしい成績を残し、本塁打王とMVPを受賞。今年の4月もリーグ最多の24打点、長打率は驚異の7割1分4厘で月間MVPを獲得と、サクセスストーリーは続いている。米国が誇る神童は、23歳にして完全開花した感がある。

「ボール球にも手を出さない」

 何より素晴らしいのは、昨季MVPに輝きながら、依然として成長中に思えることだ。去年は131三振を喫したが、今年の4月は17四球に対し、13三振のみ。相手ピッチャーはもうまともに勝負してこないことを理解し、それでも打席で辛抱強く対処している印象がある。

「経験を積み重ねることによって、選球眼、打席でのアプローチは年々良くなっている。ボール球にも手を出さないから、具体的な攻略法のようなものはなくなってしまった。現役最高級の打者だと思う」

 通算28打数12安打、5本塁打(今季5打数2安打、2本塁打)とハーパーにカモにされてきたブレーブスのフリオ・テヘランはそう証言する。

「きわどいコースに変化球ばかりを投げられ、ほとんどバットを振らせてもらえない打席も多い。それでも我慢し、粘り強く対処し、さまざまな形でチームに貢献している。この若さでそれをやりとげていることは注目すべきことだ」

 ナ・リーグ某チームのスカウトに意見を求めても、残してきた成績だけでなく、辛抱強い打席での姿勢を絶賛していた。

 そんなハーパーも、5月3日(現地時間、以下同様)までの5戦では20打数1安打10三振とややスランプ気味。打率を2割5分台まで下げてしまっていた。しかし、多くの関係者が指摘する通り、打席での着実なアプローチさえ変わらなければ、このまま不調を続けることはまずあり得ないだろう。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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