田口良一、意地を見せた元王者を破りV3 次戦は“ギリギリの勝負”求め日本人と

船橋真二郎

田口、V3達成にも詰めの部分で反省

元世界王者のランダエタを破り、V3を達成した田口良一 【赤坂直人】

 27日、東京・大田区総合体育館で行なわれたボクシングのトリプル世界タイトルマッチの先陣を切って登場したWBA世界ライト・フライ級王者の田口良一(ワタナベ)は、7位のファン・ランダエタ(ベネズエラ)に11ラウンド終了TKO勝ち。元WBA世界ミニマム級暫定王者でもある37歳の老兵から都合5度のダウンを奪い、最終ラウンドを前に、棄権に追い込んだ。

 田口はこれで3度の防衛戦にすべてTKO勝ちを収めたことになる。一昨年大みそかの王座奪取戦を含め、世界戦4試合で通算12度ものダウンを奪っているが「一発で終わらせたわけじゃないし、連打をもう少し細かくまとめていたら、もっと早く終わらせられていたはず」と、詰めの部分で力が入る悪いクセが出たことへの反省を何度も口にした。

観客からの歓声がプロボクサーの評価

5度のダウンを奪ったものの、詰めの甘さに反省の弁が出てしまう 【赤坂直人】

 柔軟なボディワークでパンチが当てづらく、たくみに打ち終わりを狙い打つランダエタのうまさに手こずりながらも2ラウンドには右フック、4ラウンドには右アッパーをきっかけに連打をまとめ、序盤から会場を沸かせた。

 いかにも田口らしいのは「歓声が少なくなって、静かになったので、中盤は良くなかったんだろうなと感じてました」という述懐である。実際はじわじわとランダエタを追い詰めており、迎えた9ラウンドに得意の左ボディで奪ったダウンに続き、連打で立て続けにカウントを聞かせた。

 さらに猛ラッシュでフィニッシュを狙ったものの、仕留めきれずにゴング。会場から思わず「ああ〜!」とタメ息がもれた場面でも「『ああ、すいません』と自分も一緒にタメ息をついてました」と敏感に反応していたという。体力を使った10ラウンド序盤には体勢を立て直し、ラウンド終盤にダウンを奪うと「判定で終わったら、お客さんをガッカリさせてしまう」とギアを入れ替えて臨んだ11ラウンド、さらに2度のダウンを追加した。

「強い相手と盛り上がる試合をしたい」という思いを田口は変わらず口にしてきた。試合中の歓声を気にするのも日本ランカー時代からで、そのダイレクトな反応がプロボクサーとしての自身の評価と捉えている。

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著者プロフィール

1973年生まれ。東京都出身。『ボクシング・ビート』(フィットネススポーツ)、『ボクシング・マガジン』(ベースボールマガジン社=2022年7月休刊)など、ボクシングを取材し、執筆。文藝春秋Number第13回スポーツノンフィクション新人賞最終候補(2005年)。東日本ボクシング協会が選出する月間賞の選考委員も務める。

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