やっぱり強い!?ソフトバンクの4月を採点 鷹詞2016〜たかことば〜

田尻耕太郎

3連覇を狙うソフトバンクは開幕1カ月を過ぎたところで14勝7敗2分。4月7日までは借金3と出遅れたものの、その後8連勝を記録して、一気に首位へ浮上した 【写真は共同】

 開幕から1カ月が過ぎた。V3を目指す福岡ソフトバンクは4月27日時点で23試合14勝7敗2分。19日に首位に立って以来その座を堅持している。開幕18試合目での初首位は、シーズン90勝して独走Vを果たした昨年より21試合も早かった。ほかのパ5球団からは「やはり今年も…」などという声も聞こえてきそうだ。

 だが、4月7日の開幕11戦目時点では借金3を抱え、やや出遅れた時期も。1つ間違えば勝負の行方はまだまだどちらに転ぶか分からない。それが長いペナントレースの面白いところでもある。

 今回はスポーツナビ編集部からのリクエストもあり、ソフトバンクの開幕1カ月を、5項目に絞って通信簿形式(100点満点)で振り返ることにする。

出遅れをカバーした強力先発陣

昨年のデビューからの不敗記録を13に伸ばしているバンデンハーク。ソフトバンク先発陣で最も頼れる存在だ 【写真は共同】

【先発ローテーション 90点】

 開幕投手は球団初5年連続で攝津正が務めた。しかし、3戦16失点で早々に2軍降格。並のチームならば、エースがこの誤算では投手陣が機能不全に陥ってもおかしくない。だが、そこはソフトバンクのハイレベルな選手層の厚さが光った。

 出遅れたチームを立て直したのは、強力先発陣の安定ぶりによるところが大きい。4月9日から20日までの8連勝で一気に浮上。そのうち7勝で先発投手に白星がついた。大黒柱が1人抜けてもビクともしない。「ホークスは『計算できる』投手が3人も4人もいる。普通はせいぜい2人だからね」と他球団関係者がため息をついていた。

 最も頼れる存在がバンデンハークだ。昨年からの不敗神話は来日2年目も継続中で、26日のオリックス戦(京セラドーム大阪)にも勝ってNPBデビューから13連勝を達成した。これは1966年の堀内恒夫(巨人)に並ぶプロ野球タイ記録。また、外国人投手の記録としても1987年から1988年にかけての郭泰源(西武)に並んだ。今季ここまでは4勝0敗、防御率1.80。ちなみに、連勝の日本記録は田中将大(東北楽天・現ヤンキース)の28連勝(2012年〜2013年)。どこまで近づけるのか、今後の登板も注目したいところだ。

工藤監督が期待する千賀。今年はプロ初完投を飾るなど、順調な成長を見せている 【写真は共同】

 その他、開幕から先発ローテを守るのが、和田毅、武田翔太、千賀滉大。5年ぶりに日本球界復帰した和田は今季初勝利まで3試合を要したが、続く20日の千葉ロッテ戦(QVCマリン)では完封勝利を挙げた。

 そして成長株として期待が高い千賀も13日の埼玉西武戦(大宮)でプロ初完投をマークするなど2勝0敗と結果を残している。特に目を引くのが4先発で31投球回数と、1試合平均で約8回を投げている点だ。

 工藤公康監督は就任当時から「先発として育ってもらいたい投手には、周りが代え時かなと思うときでも敢えて長い回を投げてもらうことがある」という方針を打ち出しており、千賀を先発で使いながら育てているのがよく分かる。

 昨年、その立場にいた武田翔太は昨季13勝からの飛躍が期待されるが、前回までの2試合で武田らしくない投球が続いた。期待の若手といえども、隙を見せれば中田賢一や大隣憲司といった実績ある投手がファームに控えている(中田は29日に今季初先発の見込み)。また、松坂大輔が2軍戦で27日に、前回から中6日で先発した。4回3失点とまだまだ調整段階だが、右腕の振りが徐々に強さを増しており、ゆっくりではあるが前進を感じさせている。

守護神サファテ以外の救援陣に不安!?

ソフトバンク絶対的な守護神としてサファテが控える。ここまで11試合で失点はわずかソロ本塁打1本のみという安定抜群の投球を披露している 【写真は共同】

【リリーフ陣 55点】

 常勝ソフトバンクの屋台骨は、じつはリリーフ投手陣である。

 昨年までの連覇も守護神サファテの存在が大きいし、五十嵐亮太や森唯斗らセットアッパーが役割を十分に果たして7回以降の逃げ切り態勢を確立していたことが勝因となった。さらに遡っても、2011年の日本一でもファルケンボーグや馬原孝浩の貢献度が大きかったし、もっと振り返ればダイエー時代にはペドラザという名ストッパーもいた。今年もサファテは抜群だ。11試合に登板して6セーブ、防御率0.82。ソロを1発被弾して1敗は喫したが、今のところ不安要素は見当たらない。

 しかし、他のリリーフ陣に不安があり、点数はやや低くつけさせてもらった。五十嵐が左太もも裏肉離れで22日に1軍を抹消された。しばらく時間がかかるだろう。今季セットアッパーとして期待されたバリオスは不振でファームへ。森は持ち味の気迫あふれるスタイルで相手を圧倒しているが、時にその力任せが仇となり痛い目に合うシーンが目につく。

 ただ、工藤監督はリリーフ陣に関して興味深い起用法を示している。
「今は7、8回の投手を固定するのではなく、状態を見ながら使っていきたい」

 そして、選手の怪我予防やコンディションを重視する工藤監督は「登板は年間60試合までに抑えたい」と話しており、リリーフにも「ローテ制」を導入したいというビジョンもかつて口にしていた。

 選手たちの疲労がたまり本当の勝負どころとなるシーズン後半に、この工藤采配が生かされるかもしれない。また、新外国人のスアレスが戦力としてメドが立ち、森福允彦が今年は復調している。中継ぎ陣もやはり層が厚い。

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著者プロフィール

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

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