五輪中間年に見えた女子フィギュア ジャンプレベルは同等、個性の時代に

野口美恵

表彰台を3カ国が独占

五輪中間年の女子フィギュアは日本、ロシア、米国の3強時代が明確となった 【坂本清】

 チームチャレンジカップが閉幕し、2015−16シーズンの主要国際大会が終了した。“平昌五輪まであと2年、まだまだ先だ”と思ったら大間違いである。半年後にはもう“五輪前年”がスタートし、五輪を意識した戦いへと突入する。このオフこそが、落ち着いて成長の方向性を見極める絶好の時間となる。

 バンクーバーではキム・ヨナ、ソチでは羽生結弦と教え子を連続で五輪金メダリストに導いたブライアン・オーサーはこう語る。

「今季のオフが一番重要。なぜなら16−17シーズンが成功すればその方向性を五輪に継続すればいいし、失敗したと感じれば反面教師で方向性を見つければ良い。つまり五輪の準備は、16年の世界選手権が終わった瞬間から始まっているのです」

 もちろん、今季の男子は言うまでもなく“4回転進化”の分水嶺(れい)。羽生とハビエル・フェルナンデスが4回転計5本を跳んで300点超えを果たし、金博洋は世界初の“1試合で4回転計6本”を成功させ、宇野昌磨は世界初の4回転フリップを跳んだ。平昌五輪に向けた準備は、全選手とも共通で“複数の4回転”であることが明確になった。

 一方の女子は、技術面での大きな進化はなかった。そのぶん、演技や滑りなど個性の多様化が示されたシーズンだった。

 まず女子のトップグループは日本、ロシア、米国の3強時代が明確になった。世界選手権の1〜8位も、グランプリファイナルの出場者6人も3カ国のみ。さらに、国際スケート連盟主催となる四大陸選手権、欧州選手権、世界ジュニア選手権の表彰台もすべて3カ国が独占したのだ。そしてこの3カ国はそれぞれの強化の方向性が異なるため、戦略の多様化が進んだ。

世代を超えてブランドを受け継ぐ日本

 ロシアの場合は、14年のソチ五輪に向けて国を挙げて選手を育成した若手とその次世代が、雨後の竹の子のようにひしめきあっている。ソチ五輪女王のアデリナ・ソトニコワも、ソチ五輪団体戦金メダルのユリア・リプニツカヤも、さらに昨季世界女王のエリザベータ・トゥクタミシェワも、すでに今季はロシア国内選手権の表彰台にすら乗らなかった。代わって台頭したのは、ソチ五輪ではシニア年齢に達していなかったエフゲーニャ・メドベデワ(16歳)や、エレーナ・ラジオノワ(17歳)。さらにソチ五輪の代表選考に僅差で漏れたアンナ・ポゴリラヤ(18歳)が世界選手権の表彰台に乗った。「3回転+3回転」の連続ジャンプを軽々と跳ぶ10代が次々と育ち、試合で挑戦するジャンプのレベルは高止まり状態。平昌五輪に向けては、誰がそのシーズンにピークを調整できるかどうか、にかかっている。

日本は15歳の樋口(写真)ら若手が台頭。強豪チームジャパンのブランドが受け継がれている 【坂本清】

 日本の場合は、06年トリノ五輪での荒川静香の金メダル以降続く、女子フィギュアの競技人口増が大きい。06年2月は、各地のリンクで入会希望者が殺到し、都内ではレッスン開始まで2年待ちというケースもあった。本郷理華(19歳)は、小学生の時に荒川静香の“金メダル凱旋パレード”でオープンカーに同乗し、世界を目指した1人。浅田真央に憧れトリプルアクセルを練習中という樋口新葉(15歳)ら若手のレベルも上がっており、世代を超えて、強豪チームジャパンのブランドを受け継いでいる心強さがある。

 また米国は、ベテラン勢が身体的にも精神的にも熟練され、ピークを迎えようとしている。これは、古くからスポーツとしてのフィギュアスケートが定着している米国ならでは。筋力を蓄えたしなやかな肉体を生かし、スピードをつけてダイナミックなジャンプを跳ぶ。身長が伸びて大人の身体になってもジャンプを跳べるという、技術的な研究蓄積のうえに、アシュリー・ワグナー(24歳)や長洲未来(23歳)の活躍が成立した。

1/2ページ

著者プロフィール

元毎日新聞記者、スポーツライター。自らのフィギュアスケート経験と審判資格をもとに、ルールや技術に正確な記事を執筆。日本オリンピック委員会広報部ライターとして、バンクーバー五輪を取材した。「Number」、「AERA」、「World Figure Skating」などに寄稿。最新著書は、“絶対王者”羽生結弦が7年にわたって築き上げてきた究極のメソッドと試行錯誤のプロセスが綴られた『羽生結弦 王者のメソッド』(文藝春秋)。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント