けがから復帰したSTVVの小野裕二 今季残り2節で存在感を示せるか?

中田徹

序盤は好調も、シーズン後半はけがに泣く

今季STVVに移籍した小野裕二。序盤は連続出場を果たしたが、後半はけがから出場機会が減少した 【Getty Images】

 シント・トロイデンVV(STVV)の小野裕二が現地時間23日のロケレン戦で58分から出場し、積極的にミドルシュートを3本放つなど元気な姿を見せた。試合は2−2の引き分けに終わった。

 横浜F・マリノスからスタンダールに移籍した小野は、負傷がちだったこともあり主力の座を射止めることができず、捲土(けんど)重来を期し今季からSTVVに移籍した。小野は開幕からレギュラーの座を確保し、19試合連続出場を果たした。しかし、12月26日のルーバン戦(2−2)で腿裏を痛めてから出場機会が減っていく。2月7日のスタンダール戦(2−1)で小野は復帰を果たすも、続く14日のメヘレン戦(0−3)で再び腿裏を痛めてしまい、長いリハビリ生活を過ごす羽目となった。結局、今季のベルギーリーグレギュラーシーズン30試合で、小野の出場は22試合に留まった。

 今季、ベルギーリーグの前半戦を6位という好成績で終えたSTVVだったが、主力選手の放出が相次ぎ、後半戦は調子を落としていき、しまいには残留争いに巻き込まれてしまった(レギュラーシーズンは13位で終了)。ピッチの上で苦しみながら闘うチームメートを、小野は観客席から見守るしかなかった。だから、プレーオフ2に懸ける小野の気持ちは強い(プレーオフ2はレギュラーシーズン7〜14位のチームで争われ、勝者はヨーロッパリーグ予選2回戦への出場権を獲得する)。

 レギュラーシーズンでは1万2000人を超す観客が集まることもあったSTVVのホームマッチだが、プレーオフ2は消化試合の色が濃く、4000人ほどしかお客が来ない。それでも小野はSTVVサポーターに勝利を贈るため、全力で戦っている。

積極的な仕掛けで、相手の脅威に

 小野の復帰マッチは4月16日に行われたアウェーのロケレン戦で、この時は12分間だけプレーした。続く23日のロケレン戦(ホーム)では、ベニト・ラマンの負傷もあって早くも58分に投入され、左ウイングとしてプレー。最初は試合のテンポに付いていけず、ボールに触る機会が少なかったが、65分に相手をかわして左足でクロスを入れてから、どんどん調子を上げていった。

 空中戦での競り合い、相手ボールのパスカット、ボールを奪ってからのフリーランを見ると、小野の体はかなりフィットし、試合勘も問題なさそうだ。70分にはサイドライン際の1対1に勝ち、そこから一気に45メートルもボールを運んだ。バイタルエリアからゴール左隅を狙ってシュートを放ったが、これは相手GKにセーブされた。

「ボールを持った瞬間、シュートにいこうと思った」(試合後の小野)
 
 89分にもゴール右隅を狙ったミドルシュートを放ったが、再びGKダビーノ・フェルフルストのセーブに阻まれた。アディショナルタイムのミドルシュートは腰が回りきらず、ミートできなかった。また、ドリブルからクロスへ持っていくシーンもいくつかあった。

「今年に入ってから、けがばっかりしていて試合に絡めずにいたので、しっかり自分のプレーをしないといけないと思ったし、さらにいつもよりもっと強い気持ちを持ってやらなければいけないと思いました。その気持ちが攻撃の面では出せたと思います。いつもよりシュートへいく回数も増えていたし、ボールを持ってから前に仕掛けて、相手の脅威になっていたと思います」

試合に出続けることの難しさを痛感

 今は痛いところがなくなり、ロケレン戦では好プレーを随所にみせただけに、今季が残り2試合しかないのは、小野にとってもったいないところ。

「今シーズンも、1シーズン通して試合に出続けることの難しさを痛感しています。ベルギーに来てから3年半。スタンダールでの最初の半年(2012−13シーズン)は試合に出たり出なかったり。次のシーズンは(開幕前に前十字靭帯断裂の)けがをした。昨シーズンも試合に出たり出なかったりだった。今季は、最初のうちはずっと試合に出ることができたけれど、シーズン途中でけがをしてしまった。先ずは1シーズン続けて試合に出られるような体作りをしたい。そして、もっとチームの力になれるようになりたい」

 今季途中、コーチから監督に昇格したクリス・オルグリンは退任が決まっているが、モチベーション高く采配を振るっている。

「いろいろな立場や思いの選手がいるだろうけれど、ここ数試合はみんな割り切って戦っている。監督も『このチームの選手である以上、ここのユニホームを着ている以上、チームが勝つよう頑張らないといけない』と言っている。僕は、チームの力になるために戻ってきた。チームが残留争いしている時、僕は歯がゆい思いでスタンドから観ていたので、なおさら自分が戻ったらチームに何かをもたらさないといけない」

 春なのに、秋風がふきすさぶようなプレーオフ2のスタイネン・スタディオンだが、それでも熱心に集まるファンに小野は勝利を届けようと奮闘している。
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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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