ロズベルグV6の重さとフェラーリの焦り 今宮純のF1中国GPインプレッション
好機を逃したフェラーリ
スタートでフェラーリの“隙を突いた”レッドブルのダニール・クビアト 【LAT】
スタート直後の1コーナーでもライコネンが深く突っ込みすぎてアウトサイドへ、そこにベッテルがセンターサイドで行き、空いたインサイドにダニール・クビアト(レッドブル)が。無茶な攻撃ではない。ベッテルは無線や会見で非難したが、審査委員アラン・ジョーンズ氏が「レーシングアクシデント」に収めたのは、まっとうな判断だと思う。
レッドブルは鋭さ見せる
オーバーテイクの最後の決め手はタイヤの履歴でも、デグラデーションの差異でもなく、サイド・バイ・サイドに持ち込んだ瞬間の「ブレーキング・スタビリティ」だ。これが今年のレッドブルRB12の切り札。スタート直後、1コーナー減速でクビアトにインから刺しこまれたベッテルは、かつて自分が乗っていたマシンだけに「やられた」と感じたのだろう。だから、よけいに感情的なコメントになったのかもしれない。
あちこちでレッドブル勢は切れ味鋭いブレーキングを見せた。4周目に18番手まで転落したリカルドが、ずばずば抜いて4位まで挽回したのは恐るべきブレーキング・スタビリティに、ほかならない。コーナー旋回速度でメルセデスに迫るレッドブルは、フェラーリをしのぐ減速力安定性も秘め、第3の存在へと、のし上がってきたような気がする。
ロズベルグ開幕3連勝、ベッテル2位、クビアト3位、リカルド4位。上海で、きらりと光ったレッドブル勢のパフォーマンス。今シーズンの戦力構図は1戦ごとに現在進行形で変わりつつある。中間勢ではメルセデスのパワーユニットを使うウイリアムズとフォース・インディアが下落して、ひたひたとトロ・ロッソが来ている。ロズベルグ大独走6連勝の裏に、16年「春のチーム相関図」最新変動が見てとれる。
(文=今宮 純)