手倉森ジャパンがメダルを手にする可能性 考え得る“最強”のクジを引いた日本

川端暁彦

日本はナイジェリア、スウェーデン、コロンビアと同居

リオ五輪の抽選会が行われ、日本はナイジェリア、スウェーデン、コロンビアと同居するB組に入った 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 リオデジャネイロ五輪サッカー競技の組み合わせ抽選会が4月14日に行われ、参加16カ国が4つのグループに振り分けられた。“第1シード”だった日本はB組に入り、同グループにはナイジェリア、スウェーデン、そしてコロンビアが同居することとなった。

「とにかく強い相手とやりたい」と豪語していたDF植田直通(鹿島アントラーズ)の言葉が現実化したような組み合わせだろう。前回のロンドン五輪で3位(韓国)と4位(日本)に入ったアジアの優勝チームとして、第1シードに当たる「ポット1」に入った日本は、ブラジルとアルゼンチンの南米2大国、そして前回大会金メダルのメキシコとの対戦が回避されることは決まっていた。同地域対戦を避けるルールもあるので、考えられる組み合わせの中では恐らく“最強”、もしくはそれに準じるクジを引いたと思われる。

“恐らく”と書いた最大の理由は五輪における各国の「戦力」を予想することが難しいからだ。大会が行われるのは8月上旬で、欧州各国のリーグは開催中か開幕直前といった状況にある。五輪はサッカーの大会ではなくスポーツの大会であるから、サッカー側の日程に配慮していないのは当たり前だが、ビッグマネーの動く欧州サッカー側としても五輪に合わせて「商機」を逸する理由はない。選手の招集をめぐっては、毎大会“綱引き”が行われることとなる。手倉森誠監督が「日本も欧州組を呼べるかは分からない」と何度も繰り返しているのは、ブラフではなく単なる本音なのだ。

 加えて、この大会には「オーバーエイジ」という厄介なレギュレーションが存在する。原則23歳以下で行われる大会ながら、3名のジョーカーを年齢無制限で選出可能という実に興行的なルールだが、彼らの参加によって五輪のサッカー競技が盛り上がるのもまた事実。今大会では開催国ブラジル代表のFWネイマールが、この枠での参加意思を公にしている。傑出した力を持つ選手の参加(あるいは不参加)は、参加各国の「戦力」を大きく変えることになる。

 日本もこのオーバーエイジ選手を起用する方針を固めており、手倉森監督はこの組み合わせ抽選を受けてから具体的な選考に入ることを示唆していた。もちろん「使わない自由」もあるのだが、前回大会では参加16チームすべてがオーバーエイジ選手を招集しており、勝ちたかったら使うしかない「枠」である。

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2試合連続で高温のマナウスで試合

日本が試合を行うマナウスは平均最高気温が32度を超過するなど、非常に暑い地域であり、暑熱順化は必須だ 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 日本の初戦は8月5日(日本時間)、アマゾン・アレーナ(マナウス)でのナイジェリア戦から幕を開ける。昨年11月から12月にかけて行われたアフリカ予選(U−23アフリカネーションズカップ)のチャンピオンだが、欧州のシーズン真っ盛りの時期に行われた大会だけあってほぼ国内組のみでのエントリーで、このときのメンバーがそのまま五輪に出てくるとは考えづらい。

 ナイジェリアのリオ五輪世代(1993年以降生まれ)は、A代表経験のある選手だけで1チームを組めるくらいの充実ぶりだ。英国プレミアリーグでプレーするFWアレックス・イウォビ(アーセナル)、ケレチ・イヘアナチョ(マンチェスター・シティ)、2014年のワールドカップ(W杯)・ブラジル大会メンバーのDFケネス・オメルオ(カスムパシャ/トルコ)といったスター選手が名を連ねてくると、オーバーエイジ抜きで考えても相当に強力な陣容になる。ただ、協会のいい加減な仕事には“定評”があるナイジェリアだけに、メンバーが本当に集まるかは不透明ではある。どうせなら強い相手とやりたいところだが。

 ナイジェリア戦に向けての日本側のポイントはピッチ外にありそうだ。この時期のマナウスは平均最高気温32度を超過。非常に暑く、その対策は必須だ。W杯ブラジル大会では、マナウスでの試合から、大会史上初めてとなる前後半途中での3分休憩「クーリング・ブレイク」が導入されたのは記憶に新しい。激しい消耗を強いられるマナウスを経験した各国(イングランド、イタリア、ポルトガル、クロアチア、米国など)は軒並み早期敗退となってしまったという事実もある。

 しかも今回は、2試合続けてマナウスである。移動がないのをメリットとして捉えることもできるが、中2日でコロンビアとの第2戦を迎えるのはいかにも苦しい。手倉森監督は「どこで試合になっても、暑い場所にベースキャンプは置こうと思っている」と明かしていたが、事前の準備段階から暑熱順化を進めていくことが肝要になるだろう。コンディショニングがうまくいかなかったブラジルW杯の二の舞は厳に避けたい。そこは当時の経験値も持っている早川直樹コンディショニングコーチの力を信じたいところだ。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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