福岡堅樹、覚悟のプロ契約で進む道 5年間で2つの五輪、ラグビーW杯へ

斉藤健仁

リオ五輪に向けて激しい代表争い

W杯の経験を生かし、リオ五輪代表入りを目指す福岡 【斉藤健仁】

 福岡はパナソニックの理解も得て、8月までは五輪出場を目指してセブンズに専念している。スーパーラグビーに参戦しているサンウルブズにも誘われたが、「やっぱり五輪は、どのアスリートにとっても最高の挑戦の舞台です。リオデジャネイロ五輪からセブンズが初めて入るのは名誉なことなので、挑戦できるのであればやってみたい」。中学時代は陸上部だったこともあり、五輪への憧れは大きく、福岡の決意は固かった。

 現在、セブンズの男子日本代表のスコッドは20名ほど。福岡がセブンズから離れていた2年間に、後藤輝也(NEC)や松井千士(同志社大3年)らが台頭した。「現在、良い競争ができています。山田章仁(パナソニック/サンウルブズ)、福岡だからオリンピックに出られるのではなく、最後は一番良い選手、フィットしている選手が出られる」(セブンズ男子日本代表の瀬川智広ヘッドコーチ)

 福岡は「セブンズの経験も浅いので、その分やらないといけない」と自分の置かれている状況を十分に承知している。ただ、指揮官が求める自分の仕事、役割も理解している。「限られた時間の中で決定力を大事にしていきたい。瞬発力とスピードで得点をして、流れを作るようなプレーができたら」(福岡)

エディー・ジャパンの経験値を生かせるか

セブンズに向けて「ボールを持つ状況で常に自分の走りができるように」と語る 【斉藤健仁】

 15人制ラグビーと同じ広さを7人でプレーするセブンズでは、個々のカバーするエリアが広く、攻守の切り替えも多く、ダッシュを繰り返す間隔は短いのが特徴だ。福岡は「ボールを持つ状況で常に自分の走りができるように、リピートスピードの繰り返しのトレーニングをしたい。またフォームがちょっと崩れてしまったので作り直さないといけない」と自身を冷静に分析している。

 ただ福岡が「準備や相手の分析が大事ですし、大舞台での経験もしている。そういった部分をセブンズにも生かしたい」と言うようにエディー・ジャパンのハードな練習、そしてW杯の舞台を経験したことは、彼ならではの強みでもあり、自負もあろう。巻き返しに期待がかかる。

東京五輪の後は医者の道へ

現役生活は5年間と期限を決めて、福岡の新たな挑戦が始まった 【斉藤健仁】

 また4月からプロ選手となる福岡だが、ラグビーは19年W杯、そして20年の東京五輪までと決めている。その後は大学の医学部に進学し、医者となると誓う。「第一線でやるのは2020年までです。ズルズルいくと次の夢への切り替えが難しくなる。しっかりけじめをつけたい。自分自身ケガの経験もあるので、今の段階ではスポーツ整形医になれればと思います」(福岡) 

 筑波大在学中は4年間で卒業できないかも、と思ったこともあった。13年、日本代表に選出され、3カ月間、大学を離れることがわかったときは「4年間で卒業するのは難しいかもしれない。両親にも相談しましたが『しょうがない』と言ってくれました」。大学4年時も春から合宿、試合と多忙な日々を続いたが、どうにか卒業にこぎつけた。

「遠征から戻って、すぐにテストだと徹夜することもあり大変でした」という福岡は、卒業にあたって「研究室の先生、ラグビー部の顧問の古川拓生先生、そして日本代表に呼んでくれたエディーさんに感謝したい。本当に、なかなかほかの人にはできない経験をさせてもらいました」と謝辞を口にすることは忘れなかった。

 3人の恩師への感謝の思いを胸に抱きつつ、5年間とプロ選手としての覚悟を決めて、まずはリオデジャネイロ五輪へと邁進する。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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