高校野球は“ジュンケツ”も面白い! 投の平安vs.智弁、打の秀岳館vs.高松商

楊順行

準決勝で勝てば、史上2校目となる甲子園通算100勝となる龍谷大平安。3試合2失点の左腕エース・市岡を中心に鉄壁の守備を誇る 【写真は共同】

「ジュンジュンが一番面白い」

 高校野球では、古くからそう言われてきた。ベスト8が戦う4試合を、1日で見られるのだ。2004年から、準々決勝が2試合ずつ2日間の日程となったが(夏は03年から)、14年には1日4試合に戻っている(翌日を休養日とした。夏は13年から)。なるほどそのとおり、やっぱり”ジュンジュン”は面白かった。延長あり、サヨナラ勝ちあり、乱打戦あり……。

延長12回を守り勝った平安

龍谷大平安vs.明石商は7回のピンチにスクイズを外して追加点を許さなかった平安に軍配 【写真は共同】

 息の詰まる、しびれるような展開は、延長12回に及んだ龍谷大平安高と明石商高の一戦。流れを左右したのは、平安高の内野守備だった。1対0と、明石商高リードの7回、1死から吉高壮が三塁打で出る。走者が出たら、手堅くバントで進めるのが明石商高だ。実際、初戦の日南学園高戦では、藤井聖也のスクイズ(記録は内野安打)でサヨナラ決着をつけている。平安高の市岡奏馬がツーツーと打者・大田亮佑を追い込んだが、スリーバントスクイズも十分、想定される場面だ。そして……きた。

 三塁走者・吉高がスタートを切る。竹葉章人捕手が、それを目でとらえた。とっさに、左打者の外側に大きく外すジェスチャー。市岡もこれに瞬時に反応し、低く外角へ。大田のバットが空を切り、ショートバウンドをうまく処理した竹葉が吉高にタッチ。平安高が、三振ゲッツーでピンチを切り抜けた。

「三塁走者のスタートが、ちょっと早かったかな……」とは明石商高・狭間善徳監督だが、平安守備陣の周到な策もあった。冨田慎太郎三塁手によると、「絶対スクイズはさせないと、試合前からショートの西川(藍畝)と打ち合わせていました。もし三塁走者がスタートを切ったら、僕もそれに合わせてホーム方向にスタートを切り、打球に対応する。あの場面、走者は三塁だけでしたから、西川も全力で三塁カバーに入る。僕のチャージで、打者に重圧をかけるためです」。

 さらに、走者に合わせて冨田が動くことも、捕手にスクイズを察知させやすくなるだろう。平安高のバントシフトは、さらに「攻めの守備」(西川)を見せた。7回裏に同点に追いついての8回表、無死一、二塁のピンチ。打者大西進太郎に対し一、三塁手が思い切って前にダッシュする。バントゾーンを狭くされた大西は初球、2球目とバントをファウルし、さらに3球目もファウル。狭間監督が「あれが大きかった……」と悔やむスリーバント失敗だ。このピンチを切り抜けた平安高は、延長12回二死満塁から、不振をかこっていた 小川晃太朗のサヨナラ打で2対1と決着をつけた。「チームのテーマは鉄壁の守備」と西川が語るとおりの、守り勝ちだといっていい。

100勝に立ちふさがる2完封の村上

3試合で2完封と抜群の安定感を誇る智弁学園のエース・村上。100勝に王手の龍谷大平安に立ちはだかる 【写真は共同】

 中京大中京に続く、史上2校目の甲子園通算100勝に王手をかけた平安高と対戦するのは、智弁学園高だ。滋賀学園高との準々決勝では、納大地が4安打2打点の大活躍。1、2回戦は無安打と絶不調だったが、2回戦後に小坂将商監督が「丸刈りにしろ」と気分転換を示唆。校歌斉唱の整列では、青々とした頭がひときわ目立った。

 投げては、村上頌樹が2安打完封。チェンジアップが効果的で、「コントロールがよく、ミットを構えたコースに100パーセントきた」とは岡沢智基捕手だ。頭上でバットをくるくる回してタイミングを取り、本塁打も打って”ヘリコプター打法”と話題になった4番・馬越大地も3打数無安打で、「クイックで投げてきたり、ボールを長く持たれたり、うまく間を外されました」と天を仰ぐ。村上は3試合を2完封の計1失点、平安高の市岡は30イニングを2失点。準決勝第1試合はどうやら、両者の投手戦になりそうだ。

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著者プロフィール

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。高校野球の春夏の甲子園取材は、2019年夏で57回を数える。

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