“カー娘”銀メダルの鍵は「新スイープ」 エース本橋休養が若手飛躍の起爆剤に
新天地で花開いた移籍組
昨年5月にLS北見へ加入し、スキップとして本橋不在の穴を十二分に埋めてみせた藤澤 【写真は共同】
藤澤は、ソチ五輪を目指すために結成された中部電力での戦いで失意を経験していた。北見市から見知らぬ長野県軽井沢町に渡り、大きな目標のためにだけ駆け抜けた日々だった。日本選手権を連覇し続けたが、最後の最後に、ソチ五輪世界最終予選への代表決定戦で北海道銀行に敗れ、夢はついえた。高校3年で中部電力行きを決めたころに「五輪を目指したい」と語ったはつらつとした笑顔と、ソチ行きが絶たれたときの悔し涙との、息苦しいほどの落差が思い出される。
そんな藤澤が地元で新天地を見つけ、中部電力で磨き上げた男子並みの攻撃的戦略を、今こうして世界の舞台で開花させるに至った。
躍進を支えた「新スイープ」
この“大き過ぎる”効果は議論を呼び、一般的なパット型のブラシでも布地の織り方に加工を施したタイプが開発された。結果的に、世界カーリング連盟主催の大会では、毛ブラシや削る効果が限度を超えるブラシは当面禁止、というルールに落ち着いた。
だが、カーラーたちは、スイープしないのではなく、斜め前方の一方向にスイープすることで、よりストーンを曲げられるということに気付いてしまった。スイープに関する常識が覆ってしまったのだ。
LS北見はカナダ合宿などでアイスの読みを含めて集中的に新スイープを強化。「マスターした」(敦賀さん)というレベルに達したのだった。(前述の)スイスとの決勝、8エンドで藤澤が放った最後のショットでは、吉田夕が即座に判断したプッシュ(曲げる方向のスイープ)が利いて、再逆転のビッグエンドを呼び込んだ。
五輪へさらなる成長の兆し
「悔しさをばねにやってきた私たちだから、この悔しさを糧に、あすから一日一日頑張る」(吉田知)、「経験や作戦の差があると感じた。もっと経験を積んで、ここぞで攻められるもっと強いスキップになりたい」(藤澤)とのコメントには、2年後の五輪に向けた日本の希望が射していた。
この快挙によってライバルたちも黙ってはいないだろう。特に日本女王の座を奪われたソチ五輪5位の北海道銀行は、何クソの意欲をメラメラと燃やしているはずだ。
そして、チームメートの本橋自身も。本橋をおもんばかる敦賀さんの以下の見方は、若きLS北見がどれほど強いチームに育ったかをも端的に物語っている。
「彼女が一番うれしいようで悔しいんじゃないでしょうかね。それは多分言葉には出さないでしょうけど。これだけのチームの成長はうれしいことだけど、今までの立場とまるっきり逆で、自分が出ていない中での大きな結果ですから、本当に悔しいはずです」