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息子の帯同制限でラローシュが突然引退
MLBに根差す家族を大切にする伝統
ラローシュの息子ドレイク君(写真中央)はキャンプにも帯同し、練習を手伝う場面も
ラローシュの息子ドレイク君(写真中央)はキャンプにも帯同し、練習を手伝う場面も【Getty Images】

「えっ! 何が起こったの?」


 3月15日(現地時間)、自分のスマートフォンに表示されたMLB速報記事を読んだ瞬間、疑問以外浮かばなかった。ホワイトソックスのアダム・ラローシュ選手が現役引退を表明したというのだ。


 もちろんキャンプ中のこの時期に現役引退を表明する選手が皆無というわけではない。だが大抵の場合、ケガなどからの復帰を目指し招待選手としてキャンプに参加しているベテラン選手が、自分が望むようなパフォーマンスができずに自ら判断するというものが多い印象が強かった。


 しかし、ラローシュは36歳のベテランとはいえ、今シーズンも年俸1300万ドル(約14億7000万円)が保証された主力選手。ここ数年で長期離脱するような大ケガをしたこともなく、現役引退に結びつく要因が思い浮かばなかった。


 翌日になって詳細が報じられるようになると、今度は疑問が驚きに変わった。なんと14歳の息子の処遇を巡る球団側の判断が原因だったからだ。


 もう日本でも報じられているので、概略だけ説明しておこう。昨シーズンからホワイトソックスに移籍したラローシュはシーズン中、息子のドレイク君を常に球場に連れてきていた。それはホーム試合に限らず遠征試合も含めてシーズンを通して続いた。チーム内では“26番目の男(メジャー登録枠は25人)”とまで呼ばれる存在になっていた。


 そんな中、ケン・ウィリアムズ上席副社長(前GM)は、昨季成績不振に終わったチームの巻き返しを図るべく、選手たちが野球に集中できる環境を整えたかった。そこでラローシュと個別会談を行い、ドレイク君のチーム帯同を制限したい希望を伝えたところ、ラローシュは反発。そのまま現役引退を表明してしまった。

家族を連れてくるのは日常的な光景

 ことの顛末は後述するとして、ここでまず理解しておかねばならないがメジャーリーグにある古き伝統だ。


 メジャーリーグは以前から選手と家族の関係を非常に大切にしている。ラローシュのみならず他の選手たちも、シーズン中に息子たちをクラブハウスに連れてくるのは日常的な光景だ。チームによって多少ルールに違いはあるものの、全チームが寛容に受け入れている。


 日本でも有名な例としては、レッドソックスがワールドシリーズを制覇した2013年、プレーオフ期間中、上原浩治投手がずっと息子の一真君を球場に連れてきていた。しかもア・リーグ優勝決定シリーズでMVPを受賞した上原とともに壇上に立ち、インタビューを受けたのは今も記憶に新しいところだろう。


 こうしてクラブハウスやグラウンドで父親や他のメジャー選手との触れ合いを続けながら自らも野球選手となり、今年殿堂入りを果たしたケン・グリフィーJr.氏や、レンジャーズで主軸を務めるプリンス・フィルダー選手のような父をも越えるようなスター選手たちが誕生している。まさにメジャー球界で長年に渡り育まれてきた古き良き伝統なのだ。

菊地慶剛
菊地慶剛

栃木県出身。某業界紙記者を経て1993年に米国へ移りフリーライター活動を開始。95年に野茂英雄氏がドジャース入りをしたことを契機に本格的にスポーツライターの道を歩む。これまでスポーツ紙や通信社の通信員を務め、MLBをはじめNFL、NBA、NHL、MLS、PGA、ウィンタースポーツ等様々な競技を取材する。フルマラソン完走3回の経験を持ち、時折アスリートの自主トレに参加しトレーニングに励む。モットーは「歌って走れるスポーツライター」。Twitter(http://twitter.com/joshkikuchi)も随時更新中。

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