V2狙う敦賀気比の大物右腕にスイッチオン 東北王者・青森山田を4安打完封の要因

楊順行

「チャレンジャーの気持ちだった」

敦賀気比のエースとして、昨年のエース平沼より「将来性は高い」と評判の山崎が東北王者・青森山田を4安打完封 【写真は共同】

「優勝旗を返したときから、チャレンジャーの気持ちです。最初は球が走らなかったんですが、ピンチにギアを上げて、しっかり抑えられた。四死球が少ないのも、良かったですね」
 1対0。東北王者である青森山田高・堀岡隼人とのしびれるような投手戦を、4安打、9三振、三塁を踏ませない完封で制した敦賀気比高のエース・山崎颯一郎は、そう振り返った。

「どこにスイッチがあるかわからない」というのが、敦賀気比高・東哲平監督の山崎評だ。だれもが認める大型右腕だが、すばらしい投球をするかと思えば、ピリッとしない日もある。たとえば昨秋の神宮大会の決勝・高松商高戦は勝利が見え始めた終盤、自らのフィールディングの乱れもあって8失点と大炎上した。果たして、甲子園初先発はどっちの山崎だろうか。

6日目という日程に助けられた!?

 不安もあった。冬場は、東監督がつきっきりで体重移動などを指導。188センチという大きな体を、うまく使い切れないことが多いからだ。「どのメニューがきつかったかといわれても、すべてきつかった(笑)」(山崎)という日々。だが大会前の練習試合では、6つも7つも四球を出すなど、どうもピリッとしない。東監督はいう。
「昨春の平沼(翔太・現北海道日本ハム)もそうでした。大会前は絶不調。たまらず、“ちょっと腕を下げてみたらどうだ”と助言して生き返ったんです。今回は、6日目という日程に助かりましたね。20〜30メートルくらいの距離を投げることで、投げるバランスを思い出させた。その成果かどうかはわかりませんが、力みなく投げていました。もし試合が初日だったら、と思うとぞっとします」

 スイッチが入った、ということか。ことに評価できるのが、5回の投球だ。エラーで出した金沢世那をバントで送られ、次打者・斉藤孔明にはボールが3つ先行する。四球を与えてもおかしくない場面だが、ここからカウントを整えて変化球で空振り三振。次打者の堀岡にも、追い込んでからファウル5球と粘られフルカウントになるが、最後は変化球で見逃し三振とピンチを脱した。粘り強い投球は、これまでの山崎にはなかったものだ。

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著者プロフィール

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。高校野球の春夏の甲子園取材は、2019年夏で57回を数える。

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