スーパーラグビー3連敗のサンウルブズ 「アンダードッグ」で終わらないために

斉藤健仁

戦略的に賢くプレーすることは欠かせない

専任コーチ不在のスクラムも苦戦している 【斉藤健仁】

 専任コーチ不在の中で、スクラムは懸念していた通りとなった。「選手とコミュニケーションを取りながら私が教えている」(ハメットHC)のが現状。そのため、低く8人で組む日本代表のようにはいかず、成熟していない。パワーと体重に勝るチームに対して、開幕戦では試合を通してプレッシャーを受けて、第3節は後半から後手に回った。ただ、「過去2試合は苦戦したが、改善している」と指揮官が言うとおり、レベルズ戦は右PR浅原拓真の奮闘もあり、ほぼ互角。今後も期待できよう。

 ラインアウトはまだまだ改善の余地がありそうだ。レベルズ戦もキャッチすることができていても、その後のデリバリーでプレッシャーを受けてしまい、攻撃の有効な起点にはならなかった。田邉コーチも「このままだったら、ラインアウトにならないような戦いをしないといけないかもしれない」と振り返った。

 田邉コーチが3試合を振り返って一番、懸念していたのは反則の多さだ。反則が多いため、それに比例して自陣でプレーする時間が増える。さらに反則するとPGや自陣奥深くでラインアウトからのモールを与えてしまう。またロングキッカーがFBリアン・フィルヨーンしかいないため、自陣からの脱出もうまくいっていない。日本代表よろしく、サンウルブズも相手よりも体が小さいため、なるべく敵陣で戦うこと、そしてボールを保持する時間を増やしつつ、戦略的に賢くプレーすることは欠かせない。

「スーパーラグビーでは振り返っている時間はない」

毎週、厳しい戦いが続くスーパーラグビー。サンウルブズはまず初勝利を狙う 【斉藤健仁】

 いずれにせよ、サンウルブズは第4節まで3試合を戦い、スーパーラグビーで戦う力があることを証明した。ハメットHCも「外からの期待値に比べて良いプレーをしている。周りから『アンダードッグ(弱者)』と見られていることは、毎試合、理解している。2〜3試合勝つことを目的としていますが、スーパーラグビーでは振り返っている時間はない。自分たちの良い部分を見つけて、さらに向上していくことが大事」とここまでの戦いぶりを振り返った。また田邉コーチも「サンウルブズはどのチームよりも伸びシロがあります。一つずつ積み上げていきたい」と先を見据えた。

 HO堀江主将は、フランスの強豪や他のスーパーラグビーチームからのオファーもありながら、「チームがなくなってしまうかも」という話を聞き、日本ラグビーの将来を考えてサンウルブズ入りを決めた。「最初はつらいことの方が多いかもしれないが、チームを一から作っていく経験なんてそんなにないし、中高生にサンウルブズに入りたいと思ってほしい」とも語っていた。勝利こそまだないが、選手たちの奮闘ぶり、スタンドで揺れるオレンジのタオルを見て、日本代表だけでなく「サンウルブズももっと、もっと応援したい」と思ったファンや、「将来、サンウルブズでプレーしたい」と心に誓った子どももいたはずだ。

 3月26日は再びシンガポールで優勝2回のブルズ(南アフリカ)と対戦、その後は南アフリカに遠征し、4月3日にキングス、9日にストーマーズ、16日にチーターズと戦い、23日にホームでジャガーズと対戦するまでノンストップだ。アウェーでの戦いが続くが、歴史的初勝利を挙げることが、きっとチームをより強くすることにつながる。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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