日本代表のダブルス強化を考える  杉山愛コラム「愛’s EYE」

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チーム戦ではダブルスが鍵になる

デビス杯でイギリスに敗れた日本。杉山さんは敗因の一つに、西岡良仁(左)、内山靖崇のペアで臨んだダブルスの敗戦を挙げた 【Getty Images】

 3月のデビス杯(デ杯)ワールドグループ1回戦で、日本はイギリスに敗れました。最終日に錦織圭選手がアンディ・マリー選手に敗れて、日本の敗退が決まりましたが、第2日のダブルスの敗戦もチームの敗因の一つとなりました。

 日本代表はダブルスの強化が課題と言われています。今は錦織選手というエースの存在があり、今回は1勝でしたが、シングルスでの2勝がある程度計算できる中で、ダブルスはチームにとってキーになります。

 もちろん昨年のプレーオフ、コロンビア戦でのダニエル太郎選手のように、シングルス2人目の活躍も期待したいところですが、シングルス1人目とダブルスを取っていれば全体の勝利がより確実なものになります。

 ダブルスの起用についてはいろいろな考え方があります。シングルスに出場する選手がダブルスでも出場するとなると、体力的にも大きな負担になります。そこで、ダブルスのスペシャリスト、もしくは普段からシングルスとダブルスの両方をこなす選手が、デ杯やフェド杯のようなチーム戦では重要な存在になります。

 例えば、ここを取らなければ優勝はないというタイミングで、エースが単複3試合に出場するケースもありますが、それは例外と考えるべきでしょう。コンスタントにワールドグループで強さを発揮しているチーム、フェド杯でいえばチェコやイタリアは、両方できる選手もしくはスペシャリストをすごく上手に育てています。もちろんデ杯でも同様です。

 今回の対戦では、錦織選手はマリーとのシングルスに全力を注がなくてはいけないというのが誰が見ても一目瞭然でした。ダブルスで起用の決断は植田実監督にも難しいでしょうし、チーム内でも彼一人に大きな負担を掛けることになるという懸念はあったはずです。

日常的にダブルスを意識した練習を

 ただ、ダブルス・スペシャリストの育成となると簡単な話ではありません。ほとんどのテニス選手にとって、シングルスがあった上でのダブルスでしょう。私自身、やはり大きな比重があったのはシングルスでした。もちろん、その選手がパッションを感じ、“ダブルスプレーヤーでやっていく”という強い気持ちがあれば、ダブルスプレーヤーとしてやっていくという選択は当然ありえますが、ダブルス一本に絞るというのは結構、勇気がいることだと思います。

 そう考えると、ダブルスに適性のある選手が、デ杯ではシングルスとダブルスの両方に取り組むというのが一番現実的でしょう。普段はシングルス中心でも、ダブルスに向いた選手を指導者が見抜いて強化していくと、チームにとってもプラスになります。また、その選手個人の実力を上げるためにもいいことなので、Win−Win(ウィンウィン)効果が出てくると思います。

 シングルスとダブルスの両方やっていたからこそお話しできるのは、相乗効果があるということです。シングルスはダブルスのためにもなるし、ダブルスはシングルスのためにもなります。また、一定の試合数をこなせるのもツアー生活では大きなことです。

 ダブルスではシングルスとはまったく違う動きや状況の見方といったものが求められます。ただ、ダブルス経験の少ない選手でも、ひとつふたつのヒントを得られれば、それからガラッと変わることもしばしば起きています。

 今のデ杯代表の選手たちが普段、ダブルスの練習をすることは少ないと思いますが、味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)などで練習するとき、あるいはツアーで一緒に練習する機会があれば、15分でも30分でもダブルスを練習するようにしてはどうでしょうか。たったそれだけでも、ダブルス特有の動きやアイディアが身に付き、チーム作りが大きく変わってくると思います。ダブルスはアイデアだと思うので、プレーの幅を普段から増やしておくことが、デ杯で即席ペアを作ったときにも生きてくると思います。

 リターンひとつでもシングルスとは大きな違いがあります。サーブ&ボレーの相手に対して足元に打つとか、リターンを打つ位置や深さも変わってくるし、リスクを負ってダウンザラインやアレー(ダブルスで広がるサイドラインの幅部分)を狙うリターンも必要です。そういう練習を普段から10本でも20本でもやっておくと、感覚が変わってくるはずです。ツアーが始まるとなかなかできることではないと思いますが、意識して15分でもいいから時間を作ってやると、半年後には違いが見えてくると思います。


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4月23日(土)午後3:00 スイスvsチェコ
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