遠藤翼がトロントで踏み出した新たな一歩 MLS開幕戦で魅せたスキルと聡明さ

杉浦大介

優勝候補に挙がるなど、チームの前評判は高い

ジョビンコ(右)らタレントのそろうトロントは、イースタン・カンファレンスの優勝候補に挙げられている 【Getty Images】

 実際にトロントFCのゲームを見れば、攻撃面では元イタリア代表のジョビンコが絶対の軸に据えられていることは一目瞭然。そして、バンニー監督が指摘する通りの戦術眼、ゲームを通じて走り抜く運動量を備えた遠藤は、毛色の違うテクニックを持つエースと見事に噛み合っているように見える。

「(ジョビンコとの)関係は攻撃において、もちろん一番大事。(後半途中に)パス&ゴーをしたんですけれど追いつけず、めっちゃ叱られたんです。だけどそういう場面はよくあるし、いちいち気にしていたらしょうがない。後で話し合ったりして、セバと良い関係を築いていければ良いかなと思っています」

 試合後、遠藤がそう語りながら、隣のロッカーのジョビンコと笑顔でつつきあうシーンもあった。この2人がケミストリーを奏でれば、チームにとって大きい。故障離脱中のアルティドールが戻れば、昨季リーグ2位の58得点を挙げた攻撃陣がさらに強力になる可能性を確かに感じさせる。

「ジョビンコ、アルティドール、(マイケル・)ブラッドリーを軸とした攻撃陣に加え、守備面も強化された。実力でやや劣るイースタン・カンファレンスに属する利点を生かし、トロントFCは“サポーターズ・シールド(シーズン中の最高勝率)”を勝ち取るだろう。今季のMLSカップ(決勝戦)は寒い12月のトロントで開催されることになる」

 老舗である『スポーツ・イラストレイテッド』誌のグラント・ウォール記者がこのように“優勝候補”に挙げたのを始め、今季のトロントFCの前評判は高い。

遠藤「MLSに注目してもらいたい」

 そんなチームの中でも、JFAアカデミー福島の一期生であり、日本人史上初のドラフト一巡指名選手である遠藤はもともと話題豊富だった。このまま先発に定着し、チーム最大のスターのサポート役を務めれば人気も高まるだろう。そして、1年目にしてトロントFCの上位進出に貢献すれば……日本人ストライカーが、米国、カナダ、日本で徐々に知名度を上げて行くことも十分に考えられる。

「自分がドラフト1位で入って、MLSの知名度が上がったのは日本のサッカーにとって良いことだし、MLSにとっても良いことだと思う。いろいろなスター選手が集まっているリーグ。自分がトロントFCに入ったことによって、日本のファンの人たちにもMLSに注目してもらいたいです」

 遠藤のそんな言葉通り、近年はMLSに多くの世界的なスター選手が飛び込んでくるようになった。そして、開幕2週目にも楽しみなカードが用意されている。

 現地時間3月13日、トロントFCはダビド・ビジャ(スペイン)、フランク・ランパード(イングランド)、アンドレア・ピルロ(イタリア)という欧州出身の“ビッグ3”を擁するニューヨーク・シティFCと激突する。MLBニューヨーク・ヤンキースの本拠地でもあるヤンキースタジアムで開催される一戦は、ニューヨーク・シティFCの今季ホーム開幕戦。華やかな雰囲気となるはずの大舞台で、遠藤はどんなパフォーマンスで魅せてくれるのだろうか。

 プロキャリアは始まったばかりだが、スキルと聡明さを備えた22歳の今後を楽しみにせずにはいられない。これから先のプレー次第で、今夏のリオデジャネイロ五輪でのU−23日本代表入りも夢ではない。

 米国を舞台に活躍を続ければ、遠藤翼の前に、徐々に、少しずつ、明るい未来が広がっていくに違いないのである。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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