クラブ史上初めて10番を志願した飯田涼 相模原の背番号にまつわるストーリー

原田大輔
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望月「期待を込めて与えることにした」

岡山から完全移籍を果たした飯田涼。今季から自ら志願した10番を背負う 【(C)J.LEAGUE PHOTOS】

 その日は関東に今年初めてまとまった積雪があり、雪に不慣れな東京の交通網は完全に麻痺(まひ)した。駅からは人が溢れ返り、立ち往生している。心配した望月重良が迎えに来てくれ、筆者を乗せて相模原へと車を走らせた。

 1月18日のことである。SC相模原にとって、2016年シーズンの始動日だった。新加入選手も含めて選手たちが初めて顔を合わせるだけに、クラブの会長である望月が遅れるわけにはいかない。幸いにして高速道路は空いていて、雪も積もっていない。時間に余裕を持って出発したこともあり、ゆったりとした車内では会話も弾む。すると自然と話題は、新シーズンに臨む戦力に及んだ。

「(川口)能活が来てくれたのは本当に大きいよ。ワールドカップ(W杯)に4回も日本代表のメンバーとして選ばれているんだからね。その経験は何ものにも代え難い。深井(正樹)も菊岡(拓朗)も、まだまだ上のカテゴリーでプレーできる選手だし、きっとやってくれると思う」

 望月は次々に新戦力への期待を口にすると、話題を変えた。

「そうそう。今シーズンの背番号10は飯田涼がつけることになったんだよ」

 飯田は昨シーズン途中にファジアーノ岡山から期限付き移籍で加入した選手だ。初出場となったJ3第13節のY.S.C.C.横浜戦(4−0)では、途中出場から鮮やかなミドルシュートを決めて一躍サポーターの心をつかむなど、攻撃センスに溢れるMFである。今シーズンから完全移籍になったとはいえ、まだ22歳の若手。望月がエースナンバーを託すのはちょっと意外な気がした。

 こちらの疑問を察知したのか、望月が言葉を続ける。

「初めてなんだよね。まだ、クラブを創設して9年目だけど、自ら背番号10をつけたいって志願してきた選手。それだけ覚悟があるってことだろうし、期待を込めて与えることにしたよ」
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著者プロフィール

1977年、東京都生まれ。『ワールドサッカーグラフィック』の編集長を務めた後、2008年に独立。編集プロダクション「SCエディトリアル」を立ち上げ、書籍・雑誌の編集・執筆を行っている。ぴあ刊行の『FOOTBALL PEOPLE』シリーズやTAC出版刊行の『ワールドカップ観戦ガイド完全版』などを監修。Jリーグの取材も精力的に行っており、各クラブのオフィシャルメディアをはじめ、さまざまな媒体に記事を寄稿している。

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