箱根ランナーが東京で見せた新潮流 学生の意識に変化、増えるマラソン挑戦

加藤康博

果敢に攻めた東洋大・服部

 日本人4位に入った服部も見せ場を作った。30キロから果敢にペースアップし、40キロ過ぎまで日本人トップ。最後の最後で失速したが、30キロから見せたスピードの切り替えはマラソンランナーとしての潜在能力を感じさせるものだった。学生選手に負けた悔しさをあらわにしながらも、収穫を口にする。

「自分の持ち味は30キロを過ぎてから1キロ3分を切るペースで思い切っていけるところ。それを発揮することはできました。ただまだ力と心の弱さがあります。これからは30キロまで3分ペースできても、それができるようにしたいですし、35キロ以降も粘れるようにしたい」

攻めの走りで見せ場をつくった東洋大の服部。酒井監督も今後に期待を寄せる 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 昨年9月に左足アキレス腱を痛め、スタミナ強化のトレーニングは11月後半から。「時間をかけて走る練習が足りなかった」と東洋大・酒井俊幸監督。30キロから32キロまでが5分55秒と、ここで一気にペースを上げた影響が終盤に出てしまった。「この初マラソンの価値は彼のこれからの取り組みで決まります。今回、守りに入らず果敢に攻めたところをもっと伸ばしてほしい」と酒井監督は卒業後の服部に期待をかけた。

陸連も学生の挑戦を高評価

 日本陸連の尾縣貢専務理事は大会後、「駅伝からマラソンへというチャレンジは賞賛に値する。大学生と関係者には敬意を評したい」と今回の学生選手の挑戦を高く評価した。
 箱根駅伝の高速化が進む現在、そのエース区間を担う選手の多くはペースメーカーがいる中、3分ペースで進むマラソンへの抵抗感を持っていない。今回、参加した学生選手がそろって収穫を口にしたように、マラソンへの意欲があり、その準備ができるのであれば早い段階で挑戦することは大きな意味がある。実業団選手にも刺激となってこれまで以上の競争も生まれるだろう。そうなれば男子マラソンはもっと活性化していくはずだ。

「僕たちが一歩を踏み出し、そして下の世代も続いてくれたら」

 レース後、下田はこうコメントを残した。今回の結果で学生のマラソン挑戦の流れがより加速することを期待したい。

 リオ五輪へ向けての収穫は乏しかったが、2020年東京五輪に向けては光の見えた大会となった。

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著者プロフィール

スポーツライター。「スポーツの周辺にある物事や人」までを執筆対象としている。コピーライターとして広告作成やブランディングも手がける。著書に『消えたダービーマッチ』(コスミック出版)

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