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箱根ランナーが東京で見せた新潮流
学生の意識に変化、増えるマラソン挑戦

 リオデジャネイロ五輪男子マラソン代表選考会を兼ねて行われた東京マラソン2016は、日本勢の多くがスローな展開でレースを進め、早い段階で優勝争いは海外招待選手に絞られた。日本人トップは8位の高宮祐樹(ヤクルト)でタイムも2時間10分57秒。代表選考レースとしては物足りなさが残ったが、下田裕太が日本人2位、一色恭志(ともに青山学院大)が同3位、そして服部勇馬(東洋大)が同4位と初マラソンに挑んだ大学生選手が上位に食い込み、次代に向けて明るい材料も見られた大会となった。

19歳下田、初マラソンもリズム崩さず

青山学院大・下田が日本人2位に飛び込む快走。10代の日本最高記録も更新した
青山学院大・下田が日本人2位に飛び込む快走。10代の日本最高記録も更新した【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 7キロを過ぎて海外招待選手がそろってペースアップ。その背中を追ったのは村山謙太(旭化成)ただひとりで、日本の有力選手は後方で大集団を形成し、20キロからはペースも大きく落ちた。その中にあり、下田はリラックスしながら走れていたという。


「(有力選手が)けん制し合ってペースが上がらず、周りがイライラしているのが分かりました。でも2時間10分から12分を狙っていた自分にとってはちょうどいいペースだと思っていたんです」


 体の状態は万全だった。通常、コンディションのいい選手がスローな展開にハマると、集団の中で無駄な動きをして体力を消耗するミスを犯しがち。下田も一度はペースアップする意志を見せたが「誰も反応しないので」と、すぐに自分のリズムを維持することに努めた。


 30キロで服部が抜け出した際には反応できなかったが、そこからはハビエル・ゲラ(スペイン)の背後につき、そのペースを利用しながら前を追った。38キロ過ぎに高宮にかわされたが、2時間11分34秒は10代日本最高記録。大学2年生の初マラソンとしては十分過ぎる結果だ。


「いろんな要素が重なって転がり込んできた日本人2位。でもタイムはほぼ目標通りです。きつかったですが、いい位置で走れて楽しかったです」


 代表選考レース独特の雰囲気も下田には関係なかった。

躍進の青学勢、スパート練習が奏功

下田や日本人3位の一色(中央)だけでなく、橋本(右端)や渡辺も好走し、青学勢が力を見せつけた
下田や日本人3位の一色(中央)だけでなく、橋本(右端)や渡辺も好走し、青学勢が力を見せつけた【写真:アフロスポーツ】

 一色は下田以上に実績があり、かつ「2時間10分切り」という高い目標でこの大会に臨んでいた。そのため下田の指摘する通り、「スローペースにイライラしてしまった」と振り返る。1キロ3分で進むレースを想定していただけに、余裕が生まれ過ぎて集中力を欠き、余計な力を使ってしまった。


「30キロまでは本当に余裕がありました。でも初めてのマラソンなので、その中でどう走っていいか分からなかったんです。後半ペースが上がった時、対応することができませんでした」


 しかしその状況でも落ち着いて拾うレースに徹し、それを実行するあたりが非凡なところ。後輩の背中にはわずかに届かなかったが、その11秒後にフィニッシュし、日本人3位の座を手にした。


「後輩に負けたことは悔しいですが、初マラソンで(日本人上位での)順位争いができたことは収穫ですし、合格点の走りだったと思います。東京五輪に向けて頑張ろうという気持ちがさらに湧いてきました」


 30キロ以降、5キロごとのラップを15分台でそろえ、ラスト2.195キロも6分55秒にまとめた。以前から多くの関係者にマラソンへの適性を認められていた一色だが、今回その力をあらためて見せつけたと言っていいだろう。


 今回、青山学院大からは5名がエントリー(1名が欠場)。本格的なマラソンへの準備は箱根駅伝終了後からであり、その内容も実業団選手の行う一般的なメニューと比べると少なめだった。最もハードなものでも42.195キロ走を2回行ったのみ。40キロを1キロ3分30秒ペースで走った後、2.195キロを2分55秒ペースへ上げる内容で、最後の力を出し切る能力を上げることが狙いだった。


「この練習はレース終盤の粘りに生きたと思います。私自身、本格的なマラソン練習は初めてでしたが、下田、一色だけでなく橋本崚(2時間14分38秒)、渡辺利典(2時間16分01秒)まで含めて100点の出来です」


 そう振り返った青山学院大の原晋監督。箱根駅伝の連覇達成から約2カ月。ここでも満面の笑顔を見せた。

加藤康博

1976年埼玉県生まれ。スポーツライター、ノンフィクションライター。国内外の陸上競技に加え、サッカー、ラグビー、アメリカンフットボールといった“フットボール全般”の取材をライフワークとする。スポーツだけでなく、「スポーツの周辺にある物事や人」までを執筆対象としている。著書に『消えたダービーマッチ』(コスミック出版)

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