ドラフト超目玉・田中正義を動画で分析=圧巻の投球が生み出される理由とは!?

高木遊

昨年はリーグ戦で12戦12勝

田中は飽くなき向上心と視野の広い思考力で自身を高めるとともに、創価大主将として大学日本一を目指す 【花田裕次郎】

 大学2年時に公式戦デビューを果たすと、150キロを超えるストレートを武器に、チームを春秋連続の全国4強に導くなど活躍してきた田中だが、昨年はさらに進化した姿を見せ、周囲の度肝を抜いた。

 その最たるものが、6月に行われたユニバーシアード壮行試合だ。侍ジャパン大学日本代表の一員としてNPB選抜戦に登板した田中は、プロの若手有望選手たちを相手に、7者連続三振を含む4イニングを無安打無四球、8奪三振と圧倒した。

 さらに秋は東京新大学リーグで6戦全勝、46イニングを投げ無失点と、これまでのリーグ記録だった小川泰弘(当時創価大/現東京ヤクルト)のシーズン最高防御率0.12を上回った。また、春のリーグ成績も合わせると12戦12勝無敗、連続無失点は50イニングにまで伸ばす。

 3点ビハインドの中でリリーフ登板した横浜市長杯(明治神宮大会関東代表決定戦)準決勝・上武大戦でも、打者16人から11三振を奪うなど、シーズンの最後まで大きなインパクトを残した(チームは逆転できず敗退)。

自らの体は自らで徹底管理

昨年6月には大学日本代表としてNPB選抜戦に登板。4イニングを投げて、7者連続を含む8奪三振無失点と圧巻の投球を見せた 【写真は共同】

 今回のインタビューで最も印象的だった言葉は「体が変わらないとフォームは変わりません」という発言だ。佐藤コーチにこのことを伝えると、「自分で、そうやって分かっているってすごいですよ。頭では分かっていてもできないことは、体ができてくれば、できるようになりますから」と、あらためて田中の意識の高さに触れ、舌を巻いていた。田中自身も周囲も「完成度はまだまだ」と話すが、田中は自らの体としっかり向き合いながら、階段を1つずつ上がっている。

 そこには創価高時代の苦い経験もある。高校1年の夏からエースナンバーを背負うも、秋に右肩を痛め、その後は主に外野手としてのプレーを余儀なくされたからだ。以来、体調や栄養の管理には細心の注意を払っている。特に食事は、菓子類には一切手を付けず、外食をしても常に栄養バランスを気にし、必要量に達したと判断すれば、そこで箸を置く。

 3月5日、6日に行われる侍ジャパン日本代表トップチームの親善試合にも招集される予定だったが、右肩の張りにより辞退した。今年は、この招集に向けて例年より早めの調整をしており「もし選ばれたら、打たれても抑えても、プラスのことしかない」と田中も前向きに話していたが、長いシーズンを考えれば賢明な選択だろう。現在は、投球練習は控え、遠投を中心とした調整で東京新大学リーグの開幕戦(会場未定)である4月2日に照準を合わせている。

飽くなき向上心と視野の広い思考力

 ドラフトイヤー、そして大学ラストイヤーを迎えるにあたって、田中は昨年の10月に大きな決断をした。

 それが創価大では異例(24年ぶり)となる投手としての主将就任。しかも田中が、昨年度の公式戦全試合を終えたその日の夜に、監督室で足を運んで直訴したものだった。その理由について、田中は「自分のことだけ考えていればいいわけではないので、主将をやらなければ味わうことのなかった苦労もあると思います。でも、一生野球ができるわけではないので、人間として成長していきたい思いがありました」と、力強い口調で語った。
 「一流の投手になるには一流の人間になること」と常々、岸雅司監督から言われていることを、田中なりの行動に移した形だ。そしてその先には、この1年でしか目指せない「大学日本一」という譲れない目標がある。

 常に不安と戦ってはいるが、日本一の頂が視界から外れることはない。それは、最後に語ったこの言葉からも窺える。

「不安やプレッシャーもあるのですが、これだけのものを味わえる人はなかなかいないと思うので楽しいです。慢心になってはいけませんが、自分に自信ができてきて、やりたいようにやれるようになってきました。今年は自分の投球や姿がチームの成績に直結する。だから、大きなやりがいを感じます」

 不安を自らの糧とし成長を目指す田中。逸材と呼ばれる男の根幹をなすのは、飽くなき向上心と視野の広い思考力にある。

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著者プロフィール

1988年、東京都生まれ。幼い頃よりスポーツ観戦に勤しみ、東洋大学社会学部卒業後、スポーツライターとして活動を開始。関東を中心に全国各地の大学野球を精力的に取材。中学、高校、社会人などアマチュア野球全般やラグビーなども取材領域とする。

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