新人の初オフから見る2016年各球団展望 カネシゲタカシの『ぷぷぷぷプロ野球』

カネシゲタカシ
 さて始まりましたスポーツナビの隠し玉的コラム『ぷぷぷぷプロ野球』。漫画家のカネシゲタカシと申します。よろしくお願いいたします。

「ふざけたタイトルだ」と思われた方も多いことでしょう。しかし編集部が最初に提案してくれた連載タイトルが『カネシゲタカシと三代目Baseball Brothers』と、もっとフザケていたことはここに記しておきます。まあ、そういうコラムです。

 さてさて、思えば『週刊イガワくん』、『ベイスたん』など10年近く漫画を連載させていただいているこのスポーツナビですが“コラムニスト”としての自分は新人選手。そこで今回は、ついに始まったプロ野球キャンプにおける“新人選手恒例のアレ”に注目してみました。

ルーキーの休日を4つのパターンに分類

「新人選手、キャンプ初オフに地元観光」が球界の恒例行事となってすっかり久しい。

 今年も各球団のルーキーたちが、マスコミのため、地元PRのため、そしてその初々しい姿をキャッキャして拝みたい我々ファンのために精一杯観光を楽しんでくれた。そう、貴重な初オフを実質返上して……。

 今回はその12球団ルーキーたちの初オフの過ごし方を4つのパターンに類型化してみた。

 実際は複数の観光体験をする場合も多く大雑把な分類であることは否めないが、そこから各球団の個性、そして今季の展望までもが見えてくる。

グルメ系…ソフトバンク、オリックス、阪神、広島

【カネシゲタカシ】

 前年日本一の福岡ソフトバンクは宮崎市内の有名店で「パティシエ体験」。黄金ルーキーの高橋純平は目標の「1軍1勝」がチョコペンで書きにくいからという理由で「新人王」に上方修正。新人選手の謙虚な目標まで変えてしまう恐るべきチョコペン。今回は上方修正だったから良かったものの、この先「書きにくいので下方修正します」なんて新人が現れないことを祈る。

 そしてオリックス・バファローズは「宮崎牛バーベキュー」。“共食い”という言葉が浮かんだのは自分だけではないだろう。

 一方セ・リーグにも目を向けよう。阪神の「いちご狩り」と広島の「金柑(きんかん)の収穫作業」を、この『グルメ系』に分類したい。広島のドラ1・岡田明丈が金柑をほおばり「思ったよりも酸っぱかった」と語る記事を見て「時代は変わった」と実感。これが猛練習で恐れられ“胃から汗が出る”と形容されたかつての広島キャンプなら「金柑どころじゃない。胃の汗が酸っぱかった。つらいです」のコメントだったことだろう。

ネイチャー系…巨人、日本ハム

 巨人は宮崎市の動物園で「象の飼育体験」。スポーツ報知の「ドラ1桜井『エレファン投』宣言 球持ちよくするゾウ」という見出しを読むと、番記者の“ダジャレ力”の調整も順調であることがうかがえる。

 対する北海道日本ハムは雄大なアリゾナ州で「植物園と岩山訪問」。北海道新聞の「上原と加藤、大きなサボテン見て喜ぶ」という小学生っぽい見出しに、「本当に書くことなかったんだろうな」と記者の苦労が見て取れる。きっと上原健太も加藤貴之も気の利いたコメントが出せないタイプだ。棒読みのヒーローインタビューが待ち遠しい。

カルチャー系…中日、ヤクルト、楽天

 中日は「シーサーの色づけ体験」、東京ヤクルトは「伝統楽器の三線(さんしん)体験」という質実剛健さ。まるで公立高校の修学旅行だ。
 
 対する東北楽天は「久米島紬(つむぎ)の着付け体験」。注目のオコエ瑠偉が100万円の和服に身を包んだ写真だけでファンは眼福。話題性で圧勝。三線で『むすんでひらいて』演ってる場合じゃない。

体力系…DeNA、ロッテ

 休日なのにガッツリ運動、これが『体力系』だ。

 横浜DeNAは「ダンスレッスン」。EXILEや三代目J Soul Brothersの振り付けで踊るというイマっぽさ。翌日、さっそくナインの前で“ランニングマン”のダンスを披露させられる今永昇太と熊原健人。しばらく使える持ちネタが生まれた瞬間である。

 そして千葉ロッテは注目のドラ1・平沢大河ら“高卒イケメン3人衆”が「龍舞」と呼ばれる演舞に挑戦。重さ約20キロにもなる龍を操った平沢は汗を拭いつつ「トレーニングになった」とコメント。
 
 ちなみに今年、“新人酷使度”が最も高いのはこのロッテだ。キャンプインに合わせて平沢らイケメン4選手のLINEスタンプを発売したり、毎週日曜日の午後8時、つまり「大河ドラマ」の裏に平沢大河の密着動画を「YouTube」にアップしたり。さらにはこのように体力系の休日を過ごさせたりと、ルーキー(というか平沢)は大忙し。チームカラーがブラックなのは良いが、“新人の酷使具合がブラック”じゃ困る。要注意だ。

番外編…西武

 なんとルーキーではなく、佐野泰雄、誠、佐藤勇、外崎修汰という若手4選手が宮崎県日南市を観光。

 理由は簡単、西武のルーキーが全員2軍スタートで高知にいるからだ。実はソフトバンクも全ルーキーが2軍スタートなのだが、キャンプ地が1軍と同じであるため高橋以下ルーキーが行事に参加できた。西武の場合そうはいかない。ちなみに去年も西武は新人全員が2軍スタートで、その際は外国人選手6名が日南観光を務めた。

 この「新人全員2軍スタート」という西武の方針には田辺監督以下首脳陣の“優しさ”が垣間見える。たしかにルーキーのいないキャンプは華がない。しかし1軍で無理に飛ばしてケガをしては元も子もない。なんと優しい親心だろう。FA宣言後に行き場をなくしていた元広島・木村昇吾をテスト入団させたこともそうだ。とにかく今年の西武は優しいのだ。

 ちなみに、ルーキーたちの“代打”を務めた若手4選手は日南市の鵜戸神宮で「運玉」という願掛けに挑戦したという。しかし「誠が運玉に挑戦」という記事を見て「『運転に挑戦』じゃなくてよかった」と思った自分は、たぶんあんまり優しくない。

まとめると??

 12球団の「ルーキー初オフの過ごし方」まとめは以上である。

  ソフトバンク、楽天、DeNAなどのIT系球団は効果的な見せ方を分かっているなという印象。そして全体的にパ・リーグの方が派手で見栄えが良い。先鋭的な球団の気質、そしてリーグの気質がルーキーの休日体験にもしっかり反映されている

 しかし、そういう「パティシエ」や「ダンス」など現代的なモノばかりでもちょっと寂しく、昔ながらの観光コースで初々しく微笑むルーキーの姿をいつまでも見ていたいという思いもある。ファンはいつだってわがままだ。

 そして「ロッテのルーキーは酷使注意」、「日ハムの上原と加藤のお立ち台はたぶん棒読み」、あと「西武の半分は優しさでできている」。これがキャンプ初オフの過ごし方からわかる2016年の展望である。
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著者プロフィール

1975年生まれの漫画家・コラムニスト。大阪府出身。『週刊少年ジャンプ』(集英社)にてデビュー。現在は『週刊アサヒ芸能』(徳間書店)等に連載を持つほか、テレビ・ラジオ・トークイベントに出演するなど活動範囲を拡大中。元よしもと芸人。著書・共著は『みんなの あるあるプロ野球』(講談社)、『野球大喜利 ザ・グレート』(徳間書店)、『ベイスたん』(KADOKAWA)など。

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